RECORDING PROSHOP MIYAJIで店頭展示。Midas M32Cの柔軟性がマニピュレーターのクリティカルな業務を支援

東京・神田に所在する国内最大級のレコーディング機器専門店「RPM(RECORDING PROSHOP MIYAJI)」にMIDAS M32Cを導入いただきました。このM32Cは店頭にて、マニピュレーター発案による、マニピュレーターのためのシステムとして展示されています。このシステムにおいて、MIDAS M32Cは重要な役割を果たしています。
本システムの発案者であるマニピュレーターの柳田将秀氏は、現場で得た知識を生かし、同店の販売スタッフも兼務されています。「デジタルミキサーはPAだけのものではない」という柔軟な発想から生まれた本システムの内容と、M32Cの活用法について、柳田氏にお話を伺いました。
マニピュレーターとは
柳田氏によると、マニピュレーターとは、ライブにおいてステージ上にいない演奏者の音源をDAWから出力し、同期演奏のためのさまざまな作業を行う職業です。
音源の再生はもちろん、演奏者のMCやコール&レスポンスに合わせてDAWをリアルタイム操作し、時には照明や効果のエンジニアに信号を送り、ライブ全体のタイミングを合わせるなど、ライブ演出において重要な役割を担います。
システム
本システムのテーマは、「2台のPCによる冗長性を確保し、自動・手動で切り替え可能なマニピュレーター用システム」です。
音声経路
【MAIN PC】と【SUB PC】からは、Dante経由で各最大16chの音声が出力されます。
出力された音声は、まずスイッチャーで分岐されます。一方の音声は、マニピュレーター自身のモニター用デジタルミキサーへ、もう一方はM32Cへと送られます。M32CからはプライマリーとなっているPC分の、最大16chの音声が出力され、アナログ/Danteコンバーターを経由して、アナログのXLR信号としてPAへ送られます。
モニター用デジタルミキサーはあくまで自分のモニターのために利用されます。シーケンスの音量調整などはPCのDAWで行うということです。
冗長性について
【MAIN PC】と【SUB PC】は、MTC(MIDI Time Code)で同期しています。一部のDAWに搭載されているジャムシンク機能により、プライマリーのPCがダウンした際にもセカンダリーのPCは独立して動けるため、瞬時にPCを切り替えれば冗長性を確保できます。
その切り替えのために、各PCのDAWからは、シーケンスの他に常時サイン波が出力されています。プライマリーのPCが停止すると、サイン波の出力も停止します。【Shinya’s studio SC Switch V2】は、このサイン波の停止を検知し、接続された【MIDIフットコントローラー】を介してMIDI信号をM32Cへ送り、シーンを切り替えることでセカンダリーのPCの音声をPAへ送ることができます。
このフットコントローラーは、マニピュレーターが足元で操作できるため、M32Cのシーンは自動・手動の両方で切り替えることが可能です。
M32Cの役割

上からTASCAMのアナログ/Danteコンバーター、M32C、Shinya’s studio SC Switch V2
M32CはMIDI信号を受信し、シーンを切り替えるスイッチャーとして機能します。最大16個のBusを作成可能なM32Cで、以下のようにBusを構成することで、PCが切り替わってもBusから出力される音声は聴感上の変化がなく、ステージの進行を妨げません。
Bus1 …MAIN PC 1ch & SUB PC 1ch
Bus2 …MAIN PC 2ch & SUB PC 2ch
…
Bus16 …MAIN PC 16ch & SUB PC 16ch

M32CのBus送りのセッティング。この時はSUB PCのchは全てMuteになっている。
M32Cのシーン切り替えによる音切れは、柳田氏によると「聴感上、わからないレベル」という高い精度です。
システムの発案について
柳田氏に、本システムの構築に至った経緯を伺いました。
マニュピレートシステムには冗長性が必須となるため、柳田氏はMIDIでシーンを切り替えられるデジタルミキサーを探しました。フェーダーやディスプレイも必要なくできるだけコンパクトなものを探し続け、1Uで4.7kgのM32Cにたどり着いたということです。これは柳田氏にとっては初めてのMIDAS製品となりました。
「M32CはLANケーブルでPCと接続するだけで操作でき、一度設定すればその後は触る必要がありません。拡張用スロットカードを交換できるため、システム構築の自由度が高い点も魅力です(店頭システムではDanteカードを搭載)。例えば、M32Cを2台使用すれば、最大32chのシステムも構築できます。非常に便利だと感じました」と柳田氏は語ります。

M32Cの背面
マニピュレーターならではの視点から、システムのコンパクトさを追求した理由についても、柳田氏は次のように説明します。
「マニピュレートは1人で動くことが多い職業です。私は海外で仕事をする機会もあるのですが、航空機に搭載できる荷物には重量制限があり、さまざまな制約があります。そのため、コンパクトなシステムが求められます。近日中に、これらの機器を一つにまとめられる4Uラックを製品化する予定です。」
最後に、M32Cについて柳田氏に伺いました。
「デジタルミキサーは、機能を紐解けば、MIDIを受信してシーンを切り替えられる機器です。これはPAだけではなく、個人が自宅でDTMに活用することもできます。デジタルミキサーでミックスしたり、さまざまなアウトボードを接続してシーン切り替えでルーティングを変更したりすれば、非常に便利です。
M32Cを見る際に、『デジタルミキサーはPA用』という固定概念を捨て、その機能に注目すれば、新たな発見があるでしょう。M32Cの拡張カードには、Dante以外にもMADI、ADATなどがあります。接続先に応じてシステムを構築できるため、非常に便利に活用できます。」
MIDAS M32の機能の詳細とスペックはこちら
日々、実務をこなす中で生まれたこのシステムは、重要な役割を担うマニピュレーターの業務を安全に遂行するための生命線となるでしょう。
システムの詳細やカスタマイズについては、東京・神田 RPM(RECORDING PROSHOP MIYAJI)の柳田氏までお問い合わせください。

柳田 将秀 氏
RPM(RECORDING PROSHOP MIYAJI)
https://rpm.miyaji.co.jp/
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1丁目7−番地 神田 宮地ビル5階
03-3255-3332
定休日:正月休み(1月1~2日)、日曜日
営業時間:12:00~18:00