AES50ケーブル 使用に関する注意事項【更新版】
対象機種:
SuperMac(AES50) 及びHyperMacプロトコルを使用したEtherComケーブル接続を行うMidas及びKlarkTenikの製品全般
MIDAS、KLARKTEKNIKがネットワークオーディオ(AES50)を採用して現在に至るまでにプロオーディオ業界で製品の機能は日々進化しており、様々な機能を持った製品の制御やオーディオの伝送をネットワーク経由にて行う事が一般化されました。
機器の進化によって、過去に実現が難しかったシステムの運用が容易になった反面、ネットワークにはアナログオーディオに比べて極めて高い周波数による通信が必要な為、ノイズについても今まで以上に配慮が必要なケースが生じて参りました。
また、近年オーディオ業界でも使い易く信頼性が向上したケーブルやコネクターも入手可能となりました。
上記の状況に伴いAES50ケーブルでも敷設において幾つかの配慮が必要となります。
1.電源ケーブル、蛍光灯等のノイズ源のそばに敷設しないでください。
2. 複数のケーブルを敷設する場合、ケーブルをまとめない(束ねない)でください。
3. 余長となるケーブルがなるべく生じないように敷設してください。
4. ケーブルを固定する場合、強く結束しないでください。
5. ケーブルを曲げる場合、緩やかに曲げてください。
6. RJ45プラグにEtherconシェルを併用することを推奨します。
7. カーペット、ビニール床、人工芝等に仮設ケーブルを敷設する場合、STPケーブルの使用を検討してください。
また、製造および開発元であるMusic Tribeから以下の内容で、Ethercomケーブルの仕様が示されるようになり、シールドされたツイストペア(STP)Etherconケーブルを推奨するようになりました。
これまで、Music Tribeのお客様には、シールドなしツイストペア(UTP, 機種:PRO Series)とシールドされたツイストペア(STP, 機種:M Series)Etherconケーブルの両方の使用を推奨して参りました。
Music Tribeは、AES50接続に使用されるEtherconケーブルの使用を標準化しています。
また、シールドされたツイストペア(STP)ケーブルは、シールドされたRJ45プラグとEtherconシェルでのみ使用する必要があると述べてきました。
STP ケーブルには、電磁干渉からケーブルを保護するシールドの追加の利点があります。良好なシールド、および正しく接続されたシールドプラグとシェルは、AES50 接続でのドロップアウトの原因となる静電放電(ESD)からの保護にも役立ちます。
稀に、シールドされた Ethercon ケーブルの一方の端をシールドから切断されたままにすることで、グランドループに役立つ場合がありますが、これは AES50 接続にはメリットがありません。これらの接続には、Ethercon シェ ルを含む両端でシールドの導通が必要です。これにより、放電や近隣での落雷などの強力な ESD 影響に対して可能な限り最良の保護が保証されます。
弊社と致しましては、製造および開発元である Music Tribe との協議の結果、シールドされた RJ45 プラグとツイストペア(STP)を使用した Ethercon ケーブルを推奨して行くことと致します。
弊社で特にお薦めするコネクターとケーブル:
プラグ: | Neutrik / CAT6A NE8MX6-B-T (芯線絶縁体径 ≦ 1.1mm) | 74003PU 用 |
Neutrik / CAT6A NE8MX6-B (芯線絶縁体径 > 1.1mm) – | 1303EPU 用 | |
ケーブル: | Belden SF/UTP (STP) 74003PU | |
Belden SF/UTP (STP) 1303EPU (特に 50m 以上) |
Midas Cat5e ケーブル推奨品
Supermac と Hypermac ケーブルの推奨品
● ケーブルの最小規格は Cat5e シールド付き STP(Screened Twisted Pair)です。
● 多本線(柔軟性のある)ケーブルの最大推奨長 :75 メートル
● 単心ケーブルの最大推奨長:100 メートル
● Supermac/Hypermac に使用するケーブルは、正しく動作させるために Cat5e 規格に準拠する必要があります。
ケーブル長に関して:
100m は Cat5e ケーブルが持つべき最大限の長さです。しかし、これはすべての Cat5e ケーブルが 100m で正常な動作が可能であることを意味するものではありません。
SuperMac/HyperMac ケーブルの最大長を決定するために、考慮すべき重要なパラメータは挿入損失です。この挿入損失は、選択したケーブルの長さに対して、24dB @100MHzb より大きくならないようにする必要があります。
ケーブルの挿入損失は、高速信号導体の物理的な構造によって左右されます。各信号導体が数本の細い銅線から構成されている場合、同じ断面積の導体が 1 本の銅線から構成されている場合よりも挿入損失は大きく(悪く)なります。 これは、多芯ケーブルは柔軟性があり、ケーブルドラムに定期的に巻き付けることが容易であるため残念なことですが、単芯ケーブルよりも地面に平らに敷設させることができます。 Cat5e ケーブルのデータシートには、100MHz で 100m あたりの挿入損失が記載されているはずです。ここから、以下のように理論上の最大長を算出することができます。
Max Length = 100 x Spec Limit/Datasheet Value
例-1 : Belden 74003PU の挿入損失は 32dB/100m @100MHz です。
Max Length = 100 x 24/32 = 75m
プラグを含める場合、20%のマージンを確保する必要があるため、60m が最大パッチコード長となります。
例-2 : Belden 1303EPU の挿入損失は 23dB/100m @100MHz です。
Max Length = 100 x 24/23 > 100m
プラグを含める場合、20%のマージンを確保する必要があるため、80m が最大パッチコード長となります。
※これらは室温(20℃)の場合です。シールドケーブルでは、20℃~60℃で 1℃当たり 0.2%伝送距離が減じる点も考慮する必要があります。
総ケーブル長:
ケーブルの長さを考える場合、パッチベイとパッチケーブルは全長で考えなければなりません。また、パッチベイや中継コネクターの接点によって挿入損失やリターンロスを生じます。機器同士を接続するケーブルはこれらの接点を極力少なくする必要があります。
シールド:
Cat5e ケーブルには、シールドされたケーブルとシールドされていないケーブルの 2 つの種類があります。どちらも 8 本の絶縁導体を 4 組に撚り合わせて作られ、一般的にシールドされたケーブルは STP ケーブルと呼び、シールドされていないケーブルは UTP ケーブルと呼びます。
コネクター:
RJ45 とケーブルの接続は、優れたコネクターメーカーが提供する組み立て説明書に従って、細心の注意を払って行う必要があります。RJ45 コネクターの取り付けを誤ると 、リターンロスに誤差が生じることがあります。RJ45 は、ケーブルにきちんと接続されているように見えても、リターンロス性能に問題を起こすことがあります。
寿命:
ケーブル及びプラグには経年劣化の影響により安全に使用できる寿命が存在しています。下記はその一般的な考えとなりますので目安とし交換時期などをご検討頂く事をお薦めします。
● プラグと機器側のコネクター: 1000 回の抜き差し
● ケーブル: 18 年 (巻く、巻きを戻すといった行為は含まれません。)
※ケーブルの寿命はプラグの寿命に合わせ交換をすることをお薦めします。
寿命は、環境によって大きく変わる事をご理解いただき、劣化が生じた場合は通信データ断、通信スピードの低下が発生いたします。
アージング:
稀に、シールドされた Ethercon ケーブルの一方の端をシールドから切断されたままにすることで、グランドループに役立つ場合がありますが、これは AES50 接続にはメリットがありません。これらの接続には、Etherconシェルを含む両端でシールドの導通とシールドに溜まった電荷(ノイズ)を逃す為の接地(アース)を推奨します。これにより、放電や近隣での落雷などの強力な ESD 影響に対して可能な限り最良の保護が保証されます。
ケーブルテスト:
挿入損失は最大ケーブル長を決定する上で重要ですが、Cat5e ケーブルとして有効であるために満たす必要のあるパラメータが他にもあります。
良いケーブルであることを確認する唯一の方法は、専用のネットワーク・ケーブル・アナライザーを使用してCat5e パフォーマンスを測定することです。これらは、導通 、短絡、および抵抗を測定するだけではなく、必要に応じて周波数をスイープしながら、通常は測定が困難な Cat5e パラメータをテストします。
※ケーブル認証ツールとして、2022 年現在で FLUKE 社 DSX-500 または DSX-8000 にて測定が可能です。
使用するケーブルを自作するよりもメーカーもしくは、販売代理店から Cat5e パフォーマンスの試験をクリアした製品を購入する事と共に、定期的な点検をメーカーもしくは、販売代理店に依頼する事をお薦めします。