L-Acoustics L-ISA Systemがaikoアリーナツアーにハイパーリアルサウンドを提供
1998年のメジャーデビューから今日に至るまで、シンガーソングライターとして幅広い世代から不動の人気を誇るaiko。彼女の5年ぶりのアリーナツアーとなるLove Like Pop vol.24は、大阪城ホールから始まり、日本武道館での追加公演を含む4会場8公演すべてが短時間でソールドアウトとなる、チケット入手が難しいコンサートの一つです。繊細かつエネルギッシュな彼女の歌声は、ストリングスやブラスを含む総勢26人のメンバーで構成されたバンドとともに、客席奥まで伸びたランウェイとセンターステージを備えたステージセットで展開され、3時間を超えるショーは観客に時間を忘れさせるものとなりました。
通常のアリーナツアーと同じ時間枠のなかで、センターステージ、ランウェイを含めてL-ISAシステムも仕上げられます。システムエンジニアであるヒビノサウンド・永易氏は言います。「時間的なことは全く心配していませんでした。これまでの経験から、L-ISAシステムであっても私たちのクルーであれば通常構成のシステムと変わらない時間でセットアップできることは立証済みですし、回を重ねるごとにその時間を短縮できることもわかっています。情感にあふれる彼女のコンサートでは、L-ISAシステムが備える空間表現能力や分解能がそれらをさらに高い次元に引き上げると確信していました。」
ミキシングエンジニアであるケンテック・琴谷氏は言います。「私はこれまでにいくつかのL-ISAショーを見たことはありましたが、自身でミックスをする機会はありませんでした。ツアーのプランがスタートしたときに永易氏からL-ISAシステムの提案を受け、早く自身でミックスしてみたい気持ちでわくわくしました。」
琴谷氏と永易氏はこれまでの彼女のショーのDAW音源をX8のL-ISAシステムを用いてミックスし、自分たちの想像を確信に変えました。観客により深い感動を提供するための技術や手法を常に模索しているaikoツアーの関係者は、音響チームからのL-ISAシステムの提案を受け入れることに何ら迷いはありませんでした。
ヒビノサウンドが提供するL-ISAシステムは、K2で構成された5アレイのFOCUSシーンと、センターシーン後方に1列で吊られたKS28サブウーハーを骨格とし、Kara IIによるエクステンションとアウトフィル、ステージ前に設けたKS28スタックサブとA10 FOCUSによる空間フィルで構築されました。すべてのラウドスピーカーはL-ISA Processor IIによるレンダリングを経て、LS10とLuminex AVB Switchの組み合わせによるAVB MILANネットワークを介したLA12Xによりドライブされます。
総数100チャンネルを上回る入力信号は、Digico Quantum 7コンソールで処理され、Splitモードで2重化されたMADI、Main / Spareの台で構成されたL-ISA Processor II、Primary / Secondly形式でのMILAN AVB伝送、これら強靭な冗長化を備えたシステムに送出されます。
Soundvisionを用いて綿密に設計されたシステムは、P1とLA Network Managerの組み合わせによるM1機能を用いて、K System Engineer(KSE)でもある永易氏によって、極めて短時間でキャリブレーションされました。永易氏は言います。「システムがうまく機能するか否かはシステム設計段階で決まると言っても過言ではありません。実際のところ、意図したとおりの設計を正確に仕込むことができれば、会場固有のルームモードや変動する大気条件への対応などの細かな作業はありますが、基礎的なキャリブレーションは短時間で仕上げることができます。」
彼女の声と小編成の楽器による親密で小さな空間が表現されるシーンから、ステージ幅を超えるパノラマの中心に彼女が位置するシーンまで、彼女の多彩な楽曲の世界に観客は魅了されていきます。
永易氏は言います。「私は自分で担当した案件も含めてアリーナクラスでのL-ISAショーを複数経験しています。どのショーでも言えることですが、観客はショーが始まるとすぐに「いつもとは違うなにか?」を感じ取りますが、数分もするとそのことは意識からすっかり消え、L-ISAが作り出す「自然な聴こえ方」によって、いつも以上に深くショーのストーリーに引き込まれていきます。」
「独特かつ複雑なコード進行と観客に共感を呼び起こす歌詞を備えていると評されることの多い彼女の楽曲は、それだけで十分に観客の感情を揺さぶるエネルギーを備えています。そこに観客に気付かれないようにL-ISAのテクノロジーを組み合わせることで、観客にこれまで以上の深い感動を提供したいと考えました。」
琴谷氏は言います。「これだけ多数の入力チャンネルをこれまではLRの2バスに対してミックスしていたため、あらゆるツールや手法を用いて各音源の分離を保ってきました。実際にL-ISAシステムでミックスをしてみると、音源ごとが備えている空間情報により、これまでよりもはるかに少ない処理で分離が保てることがわかりました。スタジオ録音されたCD音源で用いられている楽曲の中の細かな表現が、ライブコンサート環境でも同じように表現できるようになります。これはアーティストの創造性をコンサート会場でサポートする私にとって、とても魅力的なことです。」
これまで標準的なシステムでミキシングエンジニアとシステムエンジニアとして長きにわたり仕事をしてきた琴谷氏と永易氏は、今回のL-ISAシステム導入に伴いあらたなワークフローを構築しました。
琴谷氏は言います。「従来のL/R PANとは違う表現ができるため選択肢が増えます。オブジェクトのレイアウトや動きは、アーティストの意向をくみ取りながら、プリプロダクションの段階で永易氏と時間をかけてディスカッション・検証しました。こうした準備を綿密に行ったこともあり、ショーの最中はステージ上の動きとミックスに安心して集中できました。」
永易氏は言います。「ステージ上の視覚的なレイアウトを基本とし、それぞれの楽曲で表現すべき方向性を琴谷氏とのディスカッションにより定め、それにあわせて自然な分離と楽曲的な一体感を創りだすオブジェクトのパラメーターを組み上げます。ここでは、オブジェクトのロケーションやSnapの有無、リソースの確保など、L-ISA ControllerのUIを駆使するわけですが、テクノロジーが優れていることは当然として、発想をストレスなく具現化できるUIも非常に重要な要素と言えます。また、FOHコンソールポジションや会場の残響感など、ツアーで訪れた4会場それぞれに特異な条件があります。こうした細かい部分を追い込むことでシステムの完成度を高めていきます。」
オブジェクトベースミキシングシステムでは、ミキシングエンジニアとシステムエンジニアのお互いの領域がよりオーバーラップし、これまで以上に密な関係でショーを作り上げます。公演会場でのサウンドチェックやリハーサルの間も、琴谷氏と永易氏がディスカッションしながら修正や変更を協業していた姿が印象に残ります。
aiko、Love Like Pop vol.24の詳細については、https://www.aiko.com/live/をご覧ください。
ヒビノ株式会社は、https://www.hibino.co.jp/sound/、株式会社ケンテックは、https://www.kentec.ne.jp/からご覧いただけます。