2023年9月1日、和歌山県のPAカンパニー 有限会社ティースペックが自社倉庫内にイマーシブをプランしプリ・プロダクションのための「LIP-ROOM」を開設。L-Acoustics L-ISAシステムが導入されました。

LIP-ROOM:ライブ・イマーシブ・プリプロダクションルーム

約6×6×3m(縦×横×高さ)のLIP-ROOMに設置されたL-ISAシステムは、フロンタルシステムにX8 ×7、サイドとリアは5XT ×7、サブウーハーにはSyva Sub ×4のスピーカーキャビネットを配し、これらをドライブするLA12X ×6のアンプリファイドコントローラーの前段には、ハードウエアリダンダントを実現するL-ISA Processor II ×2の構成です。このほか、大空間向けのフロンタルシステムとしてA10 Wide ×10や、他のL-Acoustics製品が多数スタンバイしており、プリプロダクションから本番環境へ向けたスムーズなスケールアップが確約された環境です。

ティースペックは「普通にしてもおもしろくない。」「自分がやりたいことをひたすら深堀りする」という橋本氏の個性と探求心が光る企業として知られています。

ティースペックはPA業の他に音響機材の販売サイトLive Deviceも運営。販売する製品は橋本氏自身が欲しいと思うもの。その製品が日本国内で取り扱いされていなければ自らが輸入代理店を行うなど、パワフルなビジネスを展開しています。

橋本氏がL-ISAとイマーシブに興味を持ったきっかけは海外の展示会で受けたインスピレーションでした。
橋本氏はそれまでのInter BEEなどでイマーシブを体験したことはあったものの、さほど大きな流れにならないのではないかという印象だったといいます。
しかしバルセロナのISEやメッセフランクフルトなどの海外の展示会で、イマーシブに力を入れている多くの企業を目の当たりにした橋本氏は、そこでイマーシブの時代がやってくるイメージをしました。

それから情報収集と学習を始めた橋本氏は、新時代のイマーシブはそれまでのインスタレーションや特殊効果とは違うことを学びます。
「L-Acousticsが提唱するイマーシブ”Immersive Hyperreal Sound”は、サラウンドのように広がるようなものではなく、次世代のPAシステムです。L/R音源の欠点を補うもので、まさしくハイパーなリアルサウンドを提供するものです。」
そして、これを自分で導入することが自分の技術力を向上させるという考えに到達。ソフトウェアのみのパッケージ製品から始まり、L-Acoustics L-ISAシステムの導入を検討するまでになりました。

そうしてL-ISAシステムの導入のためにL-Acousticsのトレーニングコースを受講し橋本氏はLIP-ROOMを開設。自ら所有するL-ISAシステムの研究と検証を毎日のように繰り返しています。

橋本氏はLIP-ROOMのL-ISAシステムについてこう語ります。
「私はシンガポールのトレーニング会場やInter BEEでのL-ISAシアター、そのほか海外の展示会でL-ISAの音を聴いてきましたが、キャリブレーションを正しく行えばここでも音のイメージは変わりません. 」
「L-ISAはデフォルトの状態でただオブジェクトを置いて鳴らしただけでも圧倒的に音が良いです。セッティングがライブ向けに調整されていることがよく分かります。スタートラインの質が高く、現場のスピード感に対応できるシステムです。」

そしてL-ISAとイマーシブの未来についてこう続けます。
「世界的にイマーシブは当たり前のようになってきています。L-Acoustics V-DOSCが発表された時、私の周りは『大規模な現場だけの特別なもの。自分には関係ない』という反応でしたが、今やラインアレイは当然のものになりました。そう考えると10年後にはステージのフロントにはスピーカーが5本並んでいるのが当たり前という時代が来てもおかしくありません。私はL-ISAの音を毎日のように聴いていますがL/Rの音は物足りなく感じています。」

橋本氏はビジネス的な視点でもL-ISAを先行して導入するメリットがあると言います。
橋本氏は小さな会場でもイマーシブが構築できることを証明し、その裾野を広げていくことを計画しています。そうなればおのずと橋本氏への注目が高まります。
「例えばスピーカーの新調をアピールする事よりも、イマーシブのためにスピーカーの本数を増やす事の方がクライアントへのアピールは大きくなり、充実した予算を確保できるチャンスにつながるのではないでしょうか。」

今後橋本氏は残されたトレーニングを受けた後にL-ISAを業務で実践投入するとのこと。その際はL-Acousticユーザー企業と連携し、自身はL-ISAのシステム・エンジニアとして任務する計画だということです。

K3,KS28の導入

右:有限会社ティースペック 代表取締役 橋本敏邦 氏

ティースペックはLIP-ROOM以前の2021年12月にK3 ×12、KS28 ×6 を導入していました。

コロナ禍であったその頃、業務を配信にシフトしていた橋本氏は「やっぱりライブの方がいい。配信は空気感が足りない。」という声をきっかけに「これが明けたらとびきり良い音でライブを提供する」と決心します。

業務で使ったことのあるARCS、KUDO、K2を通してL-Acousticsの音を知っていた橋本氏は、「ゆとりがあり重厚なリッチなサウンドが出したい。ライブを最高の機材で最高のものにしたい。」という思いでK3の導入に至りました。

橋本氏は「K3は音質、大きさ、重さ、可搬性など総合的にシステムが優等生だと思います。仕事のツールとしてすごく考えられていて、トレーニングメニューも含めて完成度が高い。」と語ってくれました。


ティースペックの橋本氏は困難の中で芽生えた「最高のライブを提供したい」という思いを胸に、これからやってくる新時代のイマーシブの先駆者として挑戦を続けています。

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