L-Acoustics LシリーズとL-ISAイマーシブ・ハイパーリアルサウンドが、サウンドデザイン賞含む12回トニー賞にノミネートされたブロードウェイ・ミュージカル『アウトサイダーズ』の雰囲気を作り出す
2024年4月
1967年に初めて出版されたとき、S.E.ヒントンによる青春小説『アウトサイダーズ』は、社会と家族の激動を、当時17歳だった作者自身が的確に表現した、厳しいながら優しい物語で読者の心を打ちました。16年後、著名な映画監督フランシス・フォード・コッポラは、ハリウッドの大スターとなる若手俳優を多数起用し、この物語を映画化しました。2024 年、『アウトサイダーズ』は再び鮮やかに生まれ変わりました。今度は絶賛されたブロードウェイ・ミュージカルとして、ニューヨークのシアター・ディストリクト初のL-Acoustics Lシリーズ・スピーカーによるL-ISAイマーシブ・サウンド・テクノロジーで観客を魅了します。新しいショーは、トニー賞®のミュージカル賞と音響デザイナーのコディ・スペンサー(Cody Spencer)氏のミュージカル・サウンドデザイン賞を含む12部門にノミネートされています。
タイムズスクエアのバーナード・B・ジェイコブス・シアターで上演される新プロダクションにL-Acousticsシステムを供給したPRGのオーディオセールス担当バイスプレジデント、デイビッド・ストラング(David Strang)氏はこう語ります。「パフォーマンスにおける聴覚的体験に対する人々の期待は変ってきており、劇場アーティストがそれに対応し続けることが重要だと思います。この作品は、家で観られるような映画と違って、ライブ・シアターとして本当に観客を物語に没入させるものです。」
多くのブロードウェイの劇場と同じように、ジェイコブス・シアターもかつてはボードビルの会場であり、拡声されないスピーチや音楽のために設計されました。 「ブロードウェイの劇場では、その性質上、音響が常に大きな課題となるため、どのように対処すればよいかを考えるのに多くの時間を費やしました。」とスペンサー氏は説明します。「L-Acoustics Soundvision設計・測定ソフトウェアは、カバレッジの範囲を定義してエネルギーを反射面から遠ざけて全ての客席に届ける上で非常に重要でした。このような大きな古い劇場で試行錯誤を重ねるのは大変なことです。アンプが普及する前は、ただ大声で話すだけでどこにいても演者の声が聞こえていましたが、スピーカーではそう簡単にはいきません。L-Acousticsは従来のシステム設計でも素晴らしいスピーカーですが、このショーでは本当に特別で魅力的なショーに仕上げたかったのです。」
本当に特別で魅力的なショーに仕上げるために、L-ISAプログラマーのスティブン・ジェンセン(Stephen Jensen)、プロダクション・オーディオ・リードのマイク・トレイシー(Mike Tracey)氏、FOHエンジニアのヘザー・オーガスティン(Heather Augustine)氏を含むスペンサー氏のチームは、イマーシブ・サウンドとL-ISAテクノロジーに全力を注ぎました。「L-ISAを選んだ理由は、ディレクター、音楽部門、振付チームと早い段階からコミュニケーションを取り、観客を音に包み込みたいと考えたからです。この公演では、観客は役者の頭の中にいるようなものです。なぜかというと、場面の多くが、現在起こっていることではなく、登場人物たちによって回想されているからです。L-ISAを導入することで、観客が常に周囲の音を感じられるようになりました。例えば、ショーの序盤で主人公が顔を蹴られるのですが、蹴られた音が聞こえるだけでなく、耳鳴りも四方から聞こえます。そういったエフェクトを使うことで、実際に主人公の世界の一部であるかのように観客を感じさせることができるのです。」
スペンサー氏によれば、L-ISAは、アメリカーナ風の、ほとんどアコースティックなアンサンブルという、ショーのミニマルなライブ音楽も引き立てているそうです。「この頃のミュージカルでは、音楽がとても加工されているショーが多いが、僕たちは、バンドが実際に観客のそばで演奏している感覚を作りたかったのです。L-ISAを用いて、バンドをシステム上で分離することで、望んでいる空間化を容易に実現させることができました。素晴らしい結果を得ることができて大変満足しています。」
このシステムは設計上ユニークなところがあります。例えば、FOH席にいるオーガスティン氏のモニタリングアレイはミニチュアのイマーシブ環境になっています。「X8で構成されたフロントシステムとサラウンド・システムが彼女を囲んで、観客が聴いている大きなシステムを模倣しています。」
プロセニアム前に設置されたシーンシステムは、L-Acoustics L2Dによる5つのハングで構成され、オーケストラ席と中二階前列席をカバーしています。「『アウトサイダーズ』はLシリーズを初めて採用するブロードウェイ作品ですが、このエンクロージャーは設計の初期段階で現れた課題を解決してくれました。」とスペンサー氏は指摘します。「最初はわざわざLシリーズにする必要はないだろうと思っていました。ところが、舞台前になるその他のエフェクトを使用するために、FOHスピーカーの位置をどれだけ遠くに移動させなければならないかを知ったとき、LシリーズをSoundvisionモデルに入れてみると、L2Dは従来のラインアレイよりもオーケストラの前に3列も広い範囲をカバーできることがすぐに分かりました。その時点で、より多くの 『いい席』に臨場感溢れるカバレッジを提供するLシリーズの優位性は明らかになりました。」
3台のKS21による2つのサブウーハーアレイは中央にフライングされており、さらにステージ下の左右に配置された2台のKS21によって補強されています。バルコニーのディレイ・システムは、2台のA15 Focusからなる5つの中央アレイと、2台のA15 Wideからなる拡張アレイで構成されています。メインフロア席のフロントフィルとして7台のX8がステージ面を横切って取り付けられ、その他のフィルとしてX12、X8、5XTの様々な組み合わせが必要に応じて配置されています。LA7.16、LA12X、LA4Xアンプリファイド・コントローラーの組み合わせがシステムを駆動します。
さらに、オーケストラの中央部にはコンパクトな5XTスピーカーを1列配置し、オーバーハングの前方まで高音域を届けるのに役立っています。そして、もう1列のX8は、オーバーハングの下にあるオーケストラの後方を埋めるための空間フィルとして使用しています。メインシステムのサラウンド・システムはX8とA10エンクロージャーの組み合わせで構成される一方、バルコニーのサラウンドは片側2台のSyvaで構成されています。
「このショーのモニターシステムは、一般的なブロードウェイの劇場にあるほとんどのホールPAシステムよりも大規模なものです。」とスペンサー氏は指摘します。確かに、片側3台のX12がステージサイドフィルとなり、3台ずつでフライングされたX12が2つのオーバーヘッドシステムとして機能し、舞台前モニタリングとして10台のX4iがステージリップに沿って配置されており、舞台中央のために片側1台のX8がプロセニアムアーチに設置され、12台の5XTがアンダープラットフォームモニターとして6台ずつ並んでいます。
「観客だけでなく、役者にも、誰にでも言葉ひとつひとつが綺麗に聴こえて、ショーが親密さ、感情、つながりにあふれるようにしたかったのです。役者が前舞台に立っているのにモニタリングシステムが少数で一か所にしかないとこのつながりの感覚を実現させることが難しいのです。そのため、ステージを隅々までカバーすることにして、役者がどこに立っていても、問題なく必要な位置で必要な音を正確に提供できるようにしました。そこで、コンパクトなXシリーズは必要な制御を実現してくれました。」
サウンドシステムは、Milan-AVBネットワークを使った2台のL-ISA Processor IIの冗長セットアップで管理されています。セットアップについて、スペンサー氏は、こう語ってくれます。「本当に助かりました。ストリームを使うことで、銅線を何本も引き回す必要がなくなり、作業がとても楽になりました。アンプの一部は約18mの高さに設置されており、残りの半分は階下にあります。アンプ・ルームからファイバーをあらゆる場所に送ることができ、どこからでもネットワークを取り込み、スピーカーを簡単にピックアップできるようになったおかげで、システムの調整や変更が迅速かつ簡単になりました。」
『アウトサイダーズ』は、ブロードウェイがショーのイマーシブ・サウンドにより深く注目していることを表しています。「ブロードウェイでは何年も前から、サラウンドサウンドのさまざまなバージョンを使ってきましたが、L-ISAのような新しいツールによって音像のコントロールをもっと楽に、もっと楽しくしてくれます。」とストラング氏は説明します。「デジタル・コンソールにプログラムされたパンやディレイのパラメーターを使って自分でやっていた頃は、かなり苦労したものでした。L-ISAでは、サウンド・デザイナー、ミキシング・エンジニア、アーティストの創造性はほぼ無限になります。」