1962年に建設されたドジャースタジアムは、20世紀中期の代表的な野球場の姿を残し続け、新しいPAシステムは21世紀のワールドクラスのサウンドをスポーツエンターテイメントにもたらしました。

2020年8月

2013年以来最も重要なプロジェクトである多面的な改修工事を終えたばかりのドジャースタジアムは、この夏に設置された新しいL-Acoustics K2ラインソースアレイサウンドシステムがスタジアムの客席をカバーし、L-Acoustics A15iX8スピーカーが新しいセンターフィールドプラザと既存のアウトフィールドパビリオンの2つのエリアをカバーしたことで、全米でも最高の音響を誇るスポーツ会場となりました。

1962年に建設されたドジャースタジアムは、球場が野球の試合を開催するためだけに設計・建設されていた時代にさかのぼります。その時代の会場の多くは、コンサート、特別なイベント、その他の大規模な集会のための多目的スペースとして設計された新しいスタジアムに置き換えられましたが、ドジャースタジアムは、当時の建築と雰囲気を保っている数少ない球場の一つです。L-Acoustics K2システムの追加により、ドジャースタジアムはオリジナルの外観を維持しながら、あらゆるイベントに対応できるモダンでパワフルなサウンドシステムでその雰囲気を一新しました。この設置は、L-Acousticsにとって初のMLBプロジェクトであり、世界のスポーツ市場においてL-Acousticsのシステムが設置された最も重要なプロジェクトとなりました。

31台のK2と3台のSB28をサポートする右のリギングタワーの後ろ側

31台のK2と3台のSB28をサポートする右のリギングタワー

「我々の目標はスタジアムに最先端のサウンドシステムを設置することでした」と、ロサンゼルス・ドジャースの企画開発ディレクター、デレク・オハラ(Derek O’Hara)氏は述べます。「ドジャースタジアムは建設当時の球場と同じように設計されており、ロングスローのポイントソースのサウンドシステムを使用しています。私たちは、伝統的な建築様式を妨げることなく、スタジアムのサウンドを現代化し、野球以外でも様々なイベントを開催できるようにしたいと考えていました。」K2は、アレイからトップデッキ席までの180メートルを超えるロングスローを簡単に実現し、完全なフェイズ・コヒーレンス、明瞭度、インパクトを確保します。

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新しいドジャースタジアムのサウンドシステムは、合計62台のK2ラウドスピーカーをサポートする2つのPAタワーで構成されています。20台のエンクロージャーがL-R構成のメインアレイとして設置され、隣接するサイドアレイにはタワーごとにさらに11台のK2が配置されています。低域の補強のために、21台のSB28サブウーハーが右フィールドタワーに、3台のSB28サブウーハーが左フィールド側に配置されています。20台のコアキシャルX8が左右のパビリオンのディレイフィルとして機能します。ファンの体験をさらに向上するために、L-AcousticsのA15iとX8スピーカーをセンターフィールドプラザとアウトフィールドパビリオンの新エリアに配置しています。システム全体は32台のL-Acoustics LA12Xアンプリファイド・コントローラーにてドライブされています。AVBネットワークとプロセッシング用の2台のMilan認定P1プロセッサーは、ケーブル配線の削減し、温度や湿度の変化に対する大気制御とモニタリングを行い、システムの通信と制御を強化することで、会場のサウンドインフラの将来性をさらに高めています。

パビリオンに溶け込む20台のX8がディレイを提供しています。

建築家のバックグラウンドを持ち、一時はチームのスカウトマンを務めたこともあるオハラ氏は、L-AcousticsのサポートチームとシステムデザイナーのIdibri、インテグレーターのPro Media Audio & Videoの経験を活かし、球場の新しいSB28サブウーハーから出力されるパワフルなローエンドを含む、サウンドを可能な限り球場内に集中させるために協力しました。

「サブウーハーはエンドファイア構成で配置されており、ローエンドに重要な指向性を与えることで、ローエンドをスタジアムの外に漏らさずに、客席への影響をインパクトを客席に集中させることができます。」とオハラ氏は説明します。「K2は優れたサウンドシステムです。その水平指向性はサウンドコントロールの問題の強い味方となってくれます。しかし、K2ができることの多くは、L-Acoustics、Idibri、Pro Mediaがこのプロジェクトにもたらした専門知識のおかげでもあります。」

ドジャースタジアムのプロジェクトを担当したIdibriのシニアコンサルタント、ライアン・ノックス(Ryan Knox)氏によると、スタジアムの新しい建築構成により、外野セクションの観客席とスタンディングエリアに変更が加えられ、カバレッジの問題が発生したとのことです。この問題は、L-Acoustics Soundvisionモデリングソフトウェアを使用し、スピーカーサポートタワーの配置を最終的に決定して解決しました。「この作業自体が2~3ヶ月のプロセスでしたが、Soundvisionはそのための素晴らしいツールです。Soundvisionは、迅速かつ正確にモデル化してくれますし、優れたワークフローを持っています。」と述べます。

この規模のシステムをロサンゼルス地域に導入するには、独自の要件があります。「サウンドシステムを、この象徴的なスタジアムの建築物に合わせ外観を維持するだけでなく、南カリフォルニアの耐震要件を満たす必要もありました。」と、インテグレーターのPro Media Audio & Video社のプロジェクトエグゼクティブ、ディミトリユス・パラヴォス(Demetrius Palavos)氏は説明します。

L.A. Dodgersのホームであるドジャースタジアム

音響設備の構造工学的な認証を得るために、Pro MediaとL-Acousticsのエンジニアが協力して作業を進め、最終的には従来のK2の外部リギングハードウェアを、Pro MediaとL-Acousticsのエンジニアが考案した新しい外部装甲にアップグレードすることを決定しました。

「その後、L-Acoustics社のロサンゼルス倉庫でモックアップを作成し、製作に入る前に行った修正を検証しました。」とパラヴォス氏は説明します。「土壌の組成やリギングの高さや重さなど、多くの重要なポイントを考慮しなければなりませんでした。しかし、私たちはすべての認証要件を満たし、K2の外観をスマートでクールに保つことができました。非常に柔軟性の高いボックスです。」とオハラ氏は加えて述べます。

オハラ氏によると、新しいサウンドシステムを選択することは、主要なシステム設計者やメーカーと話をする必要があり、勉強になったと述べます。しかし、その中でも特に印象的だったのは、各メーカーに競合するシステムの評価を依頼した時でした。「業界関係者の間では、L-Acousticsに対する敬意の声が多く聞かれました。それが決断に大きな影響を与えたのですが、私たちは今、メジャーリーグで最高のサウンドシステムを手に入れたと感じています。とてもわくわくしています。」

ドジャースファンは現在進行中のパンデミックのため、アップグレードされたスタジアムとそのプレミアムサウンドを実際に体験するにはもう少し待たなければならないでしょうが、選手やアナウンサーは7月23日にドジャースタジアムで始まったMLBシーズン中、すでにフィールド上で新しいサウンドシステムを楽しんでいます。一方、自宅でテレビ放送を見ているファンは、L-Acousticsシステムを利用したスタジアムのサウンドをバーチャルで楽しむことができます。

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