2024年11月
受賞歴を持つ映画音楽の作曲家ハンス・ジマーは、2024年の秋に大ヒットになった『Hans Zimmer Live』で北米をツアーし、象徴的なマディソン・スクエア・ガーデンで行われたバースデー・ショーや、ラスベガスのリゾート・ワールド・シアターで行われた限定のL-ISAイマーシブ体験を含む20回のアリーナ公演でカナダとアメリカのファンを魅了しました。

映画音楽に命を吹き込む
ソールドアウトとなったヨーロッパツアーに続き、このツアーは、BBCに「映画音楽の革命児(Hollywood Rebel)」と呼ばれ、2017年に並外れたライブバンドとオーケストラでコーチェラを盛り上げたハンス・ジマーの復帰を果たしました。アカデミー賞、グラミー賞を複数回受賞したハンス・ジマーは『グラディエーター』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』、『ダークナイト』、『インターステラー』、『ライオン・キング』、『ラスト サムライ』、『デューン』など、世界が愛する映画音楽コンサートで観客を最初の1音から魅了しました。

「久しぶりに北アメリカで公演を開くことに感激しており、素晴らしいバンドの仲間たちと驚異的なショーを届けることを楽しみにしています。」と、ハンス・ジマーはツアーのホームページで語っていました。「本質的に音楽は人々をつなぐ力があると信じて、常に心を込めて演奏しています。」


L-Acoustics K1でパワーと精度の融合
パフォーマンスはパワフルなシステムを必要としていました。そのニーズに応えるためにオルランドに本社を置くLMG TouringがL-Acoustics K1コンサート・サウンドシステムを提供しました。「ハンス・ジマーの音楽は格別なダイナミックレンジが不可欠です。静かなときも、盛り上がるときも優れた性能を持ち、音量レベルを問わず均一な特性を発揮できるサウンドシステムを求めます。」と、『Hans Zimmer Live』でFOHエンジニア兼システムデザインを務めたコリン・ピンク(Colin Pink)氏は説明します。「K1は 音楽の繊細なパッセージに必要な明瞭さから、大地を揺るがすような瞬間に必要なヘッドルームを確実に提供してくれます。」

北米ツアーのほとんどの公演では、16台のK1の下に4台のK2によるメイン・システムと、12台のKS28サブウーハーが片側にフライングされ、これらのシステムはLA12Xアンプリファイド・コントローラーで駆動されました。アウトフィルは片側23台のKara IIで構成され、片側2台のL2がFOHミックスポジションの上にディレイとして吊られました。そして、7台のA10 Focusと2台のA10 Wideがフロントフィルとして展開され、システムは全て個別にLA7.16アンプリファイド・コントローラーによって駆動されました。3台のP1 Milan-AVBプロセッサと1台のLC16Dでシステムを補完し、1台のL-ISA Processor IIが9月29日にラスベガスのリゾート・ワールド・シアターで行われたイマーシブ・ショーのテストとプログラミングに使用されました。

複雑なプロダクションにカスタム構成を
ツアーのシステムは、巨大なステージと大勢のミュージシャンに対応するために、独特な構成がいくつかありました。「おそらく、もっともユニークなのは、アリーナのロックショーにふさわしいディレイ・キャビネットが使用されたことでしょう。」とLMG Systemsのオーディオ・マネージャであるロビー・シュレーゲル(Robby Schlegel)氏は指摘します。「客席のどの席にも明瞭で鮮明な音を届けたいというハンス氏の要望が私たちに伝わり、システムエンジニアと協力してディレイ用のL2システムを導入しました。これは、今まで使ってきた他のどんなシステムよりも優れていて、実に素晴らしかった!というか、L2でカバーされた客席は、アリーナのかなり後ろの方だったにもかかわらず、客席の中で最も音の良い席だったと言えるくらいでした。」

ハンス・ジマーのチームはアリーナのあらゆる場所で明瞭さと卓越した音響の重要性を強調した、とシュレーゲル氏は指摘します。「それを実現するために、コンサート・サウンドシステム全体は、様々な会場のサイズや形状に対応できるように柔軟性のあるモジュラー・システムとして設計されました。「LA7.16で駆動する合計23台のKara IIを片側に配置し、ハングを上下に分割して使用できるように十分なリギングとケーブルを用意しました。アレイを分割することで、チューニングや全体的なカバレッジのオプションが増えました。アレイを上下に分割することで、いずれのカバレッジを犠牲にすることなく、またどちらを優先するかを選択することなく、必要な場所にボックスを向けることができました。」


壮大なアンサンブル、デラックスなプロセッシング
ピンク氏は舞台上には多様な楽器と大勢の演奏者がいたと説明します。「ドラム奏者2人、アコースティック・パーカッションとエレクトロニック・パーカッションを演奏するパーカッショニスト2人、ギタリスト2人、ベース奏者2人、ヴァイオリニストとヴィオラ弾き3人、エレクトリック・チェリスト2人です。また、ジマー氏自身はキーボード、ギター、ベース、バンジョーを演奏しました。もう一人キーボード奏者がいて、20人のオーケストラと12人の合唱団もいました。かなりの規模でしたよ。」

ピンク氏は、このユニークなショーにはL-Acousticsのコンサート・サウンドシステムの補完に必要不可欠となった、劇場用ソフトウエアを搭載したDiGiCo Quantum7Tでミキシングを行いました。「このようなショーをこなすのに十分な大きさなので、私のお気に入りのコンソールです。舞台前方の左右にパーカッション、奥に2セットのドラムという大音量を出す楽器があったので、フロントフィルを音響ソースにタイムアライメントさせることが非常に難しいのです。シアターソフトのクロスポイント・ディレイ・マトリクスを使って、ステージ上の別々のエリアから各フロントフィルに個別にディレイをかけることができるので、ステージの上手のスネアドラムをどのフロントフィルから聴いていてもタイムアライメントが合うのです。非常に難しいショーのため、複雑なシステムでしたが、K1は従来のステレオ・レイアウトでも、毎晩、成功できる唯一のシステムです。」

ピンク氏は締めくくります。「リゾート・ワールド・シアターの公演では、既設のK2ベースのL-ISAシステムを使うことができ、ツアー・システムと比較する良い機会になりました。フロントフィルのタイムアライメントですでに15のステージ・エリアを作っていたので、これらのグループを使って楽器をL-ISAのサウンドスケープにゾーニングすることは簡単でした。明瞭さとセパレーションは一目瞭然で、ミックスから明瞭さを引き出すために通常使うトリックの半分も必要ありませんでした。楽器はそれぞれのスペースと配置が決まっており、セパレーションを保ちながらRoom Engineを使って全体を調和させるのはとても簡単でした。ミキシングする私にとっても、観客全員にとっても素晴らしい経験でした!」

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