L-Acoustics、キーン20周年記念ツアーでパーフェクトなハーモニーを奏でる
2024年8月
「L-Acousticsがこのツアーのために特別にリクエストされました。長年の間、L-Acousticsで他のアーティストのミキシングを担当してきたので一番馴染んでいるシステムです。」とキーンのFOHエンジニアであるフィリップ・ハーヴィー(Philip Harvey)氏は語ります。アルバム『Hopes and Fears』の20周年を記念して、キーンは独特な音響上の課題をもたらしたUKアリーナツアーに乗り出しました。ロンドンのO2アリーナの2公演を含めて、6つのアリーナで7公演が行われたこのツアーには、ささやくような静かな時も、高エネルギーのピークの時も、同様に明瞭かつ忠実に再生できるコンサート用サウンドシステムが求められました。
「キーンはメロディアスなバラードで知られていますが、ライブ・パフォーマンスでは非常にダイナミックなサウンドが必要になります。」とハーヴィー氏は説明します。「目標は、落ち着いた瞬間からとどろくようなクレッシェンドまで、パワフルなロックンロールショーをそれぞれの席に均一に届けることでした。」
この目標を達成する上で課題となったのは、アリーナのサイズや音響特性が様々であること、そしてT字型の張り出しステージがスピーカーの配置やカバレッジを複雑にしていることでした。更に、ディレイハングに頼らずに会場全体で一貫した音質を実現するという条件も、複雑さを増していました。
こうした課題を克服するために、キーンのチームはL-Acoustics公認プロバイダーのSolotechにサポートを求めました。Solotechプロジェクト・マネージャのティム・ミッチェル(Tim Mitchell)氏はアプローチについて語ってくれました。「ファン全員に同じフルスペクトラムの音響効果を提供するようにするためにカバレッジは最大の目標でした。観客のほとんどが指定された座席に座っているため、すべての観客に同等のクオリティとパワーで音が届くようにする必要がありました。」
解決策は、L-Acoustics Kシリーズによる包括的なサウンドシステムにありました。片側16台のK1と6台のK2がメインハングとして使用され、さらに16台のK2がサイドフィルとして、8台のK3が180°外向きに吊られました。サブウーハーは、8台のKS28が30°外向きにカーディオイド構成でフライングされ、追加の18台のKS28がカーディオイド構成でサブアークアレイとしてグラウンドスタックされました。アウトフィルは片側4台のA15 Wideで、フロントフィルと張り出しのフィルとして12台のKara IIが採用されました。システム全体はLA12Xアンプリファイド・コントローラーで駆動され、システムコントロールはMilan-AVBネットワーク上の3台のP1プロセッサーで処理されました。
L-Acoustics Soundvisionソフトウェアはコンサート用サウンドシステムのデザイン課程において重要な役割を果たしてくれました。初期のデザインは、ハーヴィー氏が複数のツアーでコラボレーションし、今回のプロジェクトに迎え入れたベテランのUSシステムエンジニアのであるマイケル・ガズジアーク(Michael Gazdziak)氏によって設計されました。その後、Solotechツアーリングエンジニアのリッチ・ケンプ(Rich Kemp)氏が各会場に合わせてデザインを調整しました。ミッチェル氏は加えて言います。「このシステムデザインの課程を通してSoundvisionを積極的に活用することで、各会場の複雑さに適応することができました。」
チームは、T字型の張り出しがもたらす独特な課題に対処するため、革新的な技術を採用した。「張り出しへの音漏れを最小限に抑えるため、K2のダウンフィルにPanflexを利用しました。」とミッチェル氏は説明します。「張り出しの端に沿って意図的に配置された2列目のKara IIは、ステージ構造の影響を受ける部分と、K2ダウンフィルでカバーされない部分にインフィルを提供しました。」
そして大成功を収めました。ハーヴィー氏はシステムの性能に満足しているそうです。「巧に生かされたL-Acousticsシステムで仕事をすることは最高の気持ちです。今回のUKアリーナツアーの成功のバロメーターはやっぱりO2の2公演だったのですが、絶賛の声が多く上がりました。」
ツアーの成功は、バンドと業界関係者の両方からの反応に表れています。「ライブに来た有名なミュージシャン、ミュージック・プロデューサー、プロダクション担当がプロダクションとパフォーマンスに魅了されたと、後からキーンから聞きました。」とハーヴィー氏は締めくくります。「個人的に、一番気に入ったのは、バンドに近い業界関係者から聞いた『キーンはかつてないほど良い音を出した!』という感想でした。」