マドンナは、大規模なL-Acousticsコンサートサウンドシステムをフィーチャーしたリオのビーチコンサートで160万人のファンを集め『Celebration Tour』を締めくくる
2024年5月
「マドンナは同じ環境に快適さを求めるタイプなので、彼女のサウンドをミキシングする際の第一の課題は、毎回、各ステージで彼女の体験を正確に再現することです。」と語るのは、マドンナFOHエンジニアのバートン・イシュマエル(Burton Ishmael)氏。彼は、『Celebration Tour』がロンドンのO2アリーナで開始された2023年10月14日から、160万人も集め、5月4日にリオで行われた「単独のコンサートに集まった史上最大の観客数」とPollstar詩に評された記録的なショーまで、スーパースターのミキシングを担当しました。
『Celebration Tour』は、Clair Globalの傘下にあるEighth Day Soundが供給したK2システムで世界中のアリーナを回りました。リオで開催されたフィナーレは、サンパウロを拠点とする音響会社Gabisomが、122台のLA12Xと90台のLA8アンプリファイド・コントローラーに加えて2台のP1プロセッサでドライブされた、172台のK1、80台のK1-SB、96台のK2、128台のSB28、68台のKS28、59台のKaraと21台のX8を含む延べ624台のL-Acousticsエンクロージャーによる巨大なシステムを提供しました。熟練したチームは、L-Acoustics Soundvisionモデリングソフトウェアの力を借りて、サウンドシステムのデザインにおいて予期せぬ課題をもたらした海辺でもこの複雑なセットアップを見事に成し遂げました。
「正直、Soundvisionがなかったら、課題を克服することができなかったと思います。」とイシュマエル氏は語ります。「ビーチの詳しいレイアウトや、会場の正確な位置もわからなかったので、一人当たり0.4平方メートル×何百万人もの人数を考えて必要なスロー能力を計算するしかありませんでした。計算で出てきた数字をSoundvisionに入れ込んで、全体のシミュレーションを行うことができました。Soundvisionがなかったら、まったく不可能だったと思います。」
それらの正確な計算により、イシュマエル氏とシステムエンジニアのアンディ・フィトン(Andy Fitton)氏とクルー・チーフのフランク・ピーポーズ(Frank Peoples)氏はこの繁雑な会場に適応したデザインを作成することができました。「音を反射する壁がないことを覚悟していましたが、さらに海辺における温度の変化を想定することも必要でした。昼間は暑く、夜になると少なくとも10~15度は冷え込むことがあるうえに、音を偏向させる可能性を持つ風も大きな懸念事項でした。」とイシュマエル氏は説明します。「それに加えて、空気中の塩分と海霧も難題で、自然との闘いでした。コンサートのサウンドシステムに多くのパワーを詰め込んだのは、そのためです。そういえば、アンプリファイド・コントローラーの多くは海岸に打ち寄せる波からわずか 30mのところにあったのですが、海岸のアレイを問題なくしっかりとドライブできました。」
特にシステムのディレイタワーは、設置場所と台数の印象的なセットアップでした。4台のK1SB、8台のK1、4台のK2と8台のKS28による8つのステレオタワーが浜辺にそって配置されました。「ディレイタワーを機能させるには、大気の変動や距離を考慮しなければなりませんでしたが、SoundvisionのAutoclimateやAutofilterのようなオートソルバーツールのおかげで、この規模でも容易に管理できました。そして、FOHから約800m離れたタワー・スピーカーのキャリブレーションに使用されたワイヤレス・マイクのアンテナが、これらのシステムを最大レンジまで伸ばしてくれました。」とフィトン氏は語ります。 「Soundvisionのディレイ・マッピング・モードは、これを正しく行う上で非常に重要でした。また、SPLターゲットで中低域のパターンを視覚化する機能は、約100mのスロー距離でシステムの全体的な均質性を達成するのに必要不可欠でした。」
もうひとつ懸念されたのは、マドンナがショーの最中に歩き回る3つの大きなキャットウォークでした。「アリーナと違って、ビーチは、機材を吊り下げることができる屋根やグリッドシステムがなく、困っていました。」とイシュマエル氏は語ります。「その課題を克服するために、メインスピーカーを3つのキャットウォークに跳ね返らないように、その下に設置し、KaraとX8によるアップステージフィルを追加しました。そうすることで、キャットウォークをFOHのサウンドから守りながら、VIPエリアに素晴らしいカバレッジを提供することができました。」
『Celebration Tour』のクルー・チーフとして、ピーポーズ氏はリオのショーではチームワークが不可欠だったと語ります。2019年のローマ法王フランシスコのパナマ訪問の音響システム・クルーの一員でもあったピーポーズ氏は、このような規模の制作の難しさを熟知しています。「なるべくスムーズに実現できるよう、みんなが力を合わせました。L-Acousticsのクリス・サリバン(Chris Sullivan―通称Sully)とアレックス・ソト(Alex Soto)は、システム設計の専門知識を提供し、どんな質問にも答えてくれました。そして、Kシリーズのスピーカーは、サウンドが必要な場所に届き、かつ良い音を出すために必要なスローを持っており、カバレッジと忠実性に関して何の心配もありませんでしたが、サリーさんとアレックスさんはこのショーを成功させる大きな要因となりました。」
イシュマエル氏によると、『Celebration Tour』のコンサートサウンドシステムの設計には、膨大な注意と労力と時間が費やされたといいます。リハーサルはブルックリンのサウンドステージで始まり、ツアーが始まる1年前にはナッソー・コロシアムで行われました。それでも、ビーチでのファイナルショーは、そのスケールと挑戦という点で特異なイベントでしたが、L-Acousticsのテクノロジーは、そのような難題を見事に克服するためのツールをチームに提供しました。
「私は完全に期待通りに満足しています。スピーカーとアンプは非常によく機能してくれました。システムのどこで何が起こっているのか、いつでも監視できることは、安心を与えてくれました。そして、音も、ショーの最初から最後まで、L-Acousticsに期待した通りの卓越したものでした。」