ミシガン・オペラ・シアターで上演された『ブルー』がL-AcousticsのL-ISAイマーシブ・サウンドで観客に感動を与える
デトロイトのAretha Franklin Amphitheatreで上演されたこの現代オペラ作品では、L-ISA Immersive Hyperreal Soundが役者と音をリンクさせ、観客との触れ合いを深めることに貢献しました。
2021年12月
新型コロナウイルス感染拡大により、舞台芸術団体は観客を増やすために活動の幅を広げる必要に迫られましたが、ミシガン・オペラ・シアターは、この時期に多くの団体よりも積極的に行動し、デトロイト・オペラハウスの駐車場など従来のオペラ会場とは異なる場所でプログラムを開催してきました。
そして9月のある週末、ジャニーン・テソリとタズウェル・トンプソン(Tazewell Thompson)による現代アメリカン・オペラ『ブルー』が、市内の野外劇場アレサ・フランクリン・アンフィシアターで上演されました。この会場では、チャカ・カーン、マシン・ガン・ケリー、エリカ・バドゥ、UB40などのポップミュージックが上演されてきました。
Music Critics Association of North America(北米音楽批評家協会)から2020年ベストニューオペラ賞を受賞した『ブルー』は、現代のハーレムで息子を育てる若い黒人夫婦と、警察の横暴に悩む彼らの姿を描いた作品です。全員黒人の出演者たちが奏でるこのオペラは、祝典であり、悲劇であり、タイムリーで非常に意義深い作品です。アレサ・フランクリン・アンフィシアターでは、オペラというジャンルの公演はあまり行われませんが、L-Acoustics L-ISA Immersive Hyperreal Soundテクノロジーを採用することで、公演者と観客の両方に没入感と魅力的な環境を作り上げることができました。
オペラとミュージカルを融合させた『ブルー』は、より高い次元で観客とつながることを目指した作品です。「この作品のサウンドについて検討していたとき、物語の親密さを維持しながら、アイデアの大筋を伝えるにはどうしたらいいか、と自問自答しました。例えば、神、国家、歴史、暴力に立ち向かうなど。」 と、ミシガン・オペラ・シアターのゲイリー・L・ワッサーマン芸術監督ユヴァル・シャロン(Yuval Sharon)氏と密接に協力したディレクターのカネザ・シャール(Kaneza Schaal)氏は語ります。
「この作品は伝統的なオペラ劇場で上演するために作られたものですが、ここ野外のアレサ・フランクリン・アンフィシアターは、まったく異なる提案になっています。そのため、この物語の親密さと壮大さの両方を表現できる協力者を集めることが不可欠だったのです。L-Acousticsとのコラボレーションが、それを可能にしたバックボーンになりました。L-ISAのテクノロジーが実現したのは、ステージと観客の間で、より一体感のある体感ができる環境を作り出すことです。」
シャロン氏も同意見です。「オペラは通常、音響的に適した会場で電気的な増幅せずに上演され、ほとんどささやくような声から最も大きな声まで、全帯域にわたり人間の声の美しさを表現します。」と彼は説明します。「アレサ・フランクリン・アンフィシアターのようなステージでそれを再現することは大きなチャレンジでした。なぜなら、すべてが大音量で前面に出てくるようなロックンロール・ショーのように感じられないようにすることが重要だったからです。やはり、ニュアンスや繊細さ、そして音が空間を作り出している感覚を味わってほしいという思いがあったのです。
「L-ISAテクノロジーを『Blue』に採用したことで、サウンドが歌手を追いかけるように移動することは、極めて大きなメリットでした。L-ISAによって、オペラハウスと同じように、観客は耳で舞台上の歌手の位置を感じ取ることができるのです。繊細な効果でこれがなかったら体験を大きく損なっていたでしょう。L-ISAのおかげで、この作品の奥深さと全容を観客に伝えることができました。」と語ります。
リヴォニアを拠点とするThunder AudioがほとんどのSR機材を供給しました。『Blue』の17.1サラウンドサウンドでは、8台の L-Acoustics Kiva IIによる7つのアレイがステージの上からフライングされ、サラウンドとして10台の Syvaが使用されました。さらに、フロントフィルとして7台のX8がステージリップに沿って配置され、ローエンドにインパクトを与えるために4台のKS21サブウーハーが追加されました。このシステムはL-Acoustics L-ISA Processorで設計・実装され、DeskLink経由でFOHのDiGiCo SD10 コンソールで制御されました。
アレイシステムは、L-Acousticsの予測ソフトウェアSoundvisionを用いて、アコーステック的なステージを設定し、明瞭度を損なうような反射を避けるようにデザインされました。「大きな課題のひとつは、オペラハウスのような制御された環境と違い、屋根のある屋外舞台で作業することでした。」と、同じくL-Acousticsのカルロス・モスケーラ(Carlos Mosquera)とマーカス・ロス(Marcus Ross)と共同でシステムのデザイン、セットアップ、運用を担当したL-Acousticsのアプリケーション・エンジニアであるジョーダン・タニ(Jordan Tani)は説明します。
「この会場は反響音が多いのですが、Soundvisionでは空間で起こる現象を正確に予測することができます。観客の視点に立った音響ジオメトリーを確立し、会場全体を適切にカバーすることができました。」とタニは続けます。
『Blue』のFOHエンジニア、ステファニー・ファリーナ(Stephanie Farina)氏は、会場が非常に反射が多いことを再確認しました。「道具さんが作業中に、ハンマーで何かを叩いたら、それが3回ほど響いたのです。これはどのようなシステムにとっても良くないことですが、特に明瞭度と透明度がすべてであるオペラやミュージカル劇場では、なおさらです。」と彼女は説明します。「観客が演奏を理解するためには、ストーリーを明確に聞き取ることが必要です。」
ファリーナ氏は、L-ISAでミキシングをして、上手く配置されたスピーカーシステムと、ステージを動き回るそれぞれの役者と音声をリンクさせる組み合わせが、芸術的にも技術的にも大きな変革をもたらすことを発見しました。「L-ISAの優れた点は、音声を定位させているため、システムを少し抑えることができ、反射が少なく、必要な明瞭度と透明度が得られるということです。観客は役者との一体感を得られるのです。」と彼女は言います。
「L-ISAは、演劇界の著名な作曲家ジェニーン・テソーリによる素晴らしい楽曲をダニエラ・カンデラリが指揮した音楽に関しても、素晴らしい成果を上げています。」と、加えます。「約35平米のスペースに30人のオーケストラが詰め込まれていたのですが、L-ISAは実際にそれらを広げて、6000人収容の会場の後方に届くまで、音を響かせることができました。」
「迫力あるオペラのストーリーテリングと芸術に没入型オーディオを活用することには、間違いなく大きな価値があります。」とジョーダン・タニは付け加えます。「オーケストラと歌手の両方に空間を与えることができるようにします。音楽がうまく呼吸をすることができるようにします。それがL-ISAの特徴です。親密で感情的な芸術作品を、3次元で生き返らせることができるのです。」
プロジェクトの動画は下記リンクよりご覧いただけます。(英語)
www.youtube.com/watch?v=szxiBkKSRlo
写真提供元:Mitty Carter, Michigan Opera Theatre