2023年6月
北京のメインストリート、長安街にある中国国家大劇院(以下「大劇院」という)は、アジアで最大規模の複合劇場で、2007年のオープン以来、オペラ、演劇、音楽と美術の展覧会を開催してきました。フランスの建築家ポール・アンドリューによって設計された劇院は、長円の形をしたチタン製の立派なドーム型を持ち16,5万平米の総面積を誇り、その形と大きさから、地元の人々に「巨大なタマゴ」と呼ばれています。地上の高さがわずかの46mですが、深さが10階建てビルの高さに相当し、劇場は全て地下にあります。

一番深い場所にある2,207人収容のオペラホールは、中央歌劇院がおくる『山海情』を2022年10月と2023年3月に上演しました。大劇院と中国舞台美術学会が共催するこのフォーク・オペラ劇は同名のオリジナルテレビドラマを基にしています。寧夏回族自治区の首府・銀川市の近くに位置する永寧県を舞台に、1991年から措置された中国内陸部極貧地域の脱貧困政策の成功例を描きます。

北京・中国舞台美術学会による『山海情』の舞台。
L-ISAの導入により、自然で感じのいいサウンド体験を届けました。

大劇院の舞台技術チームは、現在中国でもっとも人気の高いサウンドデザイナー、フー・ビャオ氏に、スピーチ、ボーカル、アンビエントの信号で100本近くものマイクを使用するプロダクションのオーディオ・ソリューションを依頼しました。大劇院は、従来のステレオシステムより、自然で感じのいいサウンド・エクスペリエンスを求めていました。フー氏は、L-ISA没入型オーディオ・システムなら、そんな期待に沿えるに違いないと確信し、彼の持つL-ISAテクノロジーの豊富な経験により、プロジェクトで最先端のイマーシブサウンド・テクノロジーの使用を提案することができました。

「私は、イマーシブサウンドのソリューションを大規模の企業イベントからコンサートまで、さまざまなプロジェクトに提供してきました。この大きなプロダクションが必要とするダイナミックでナチュラルなサウンドを、L-ISAが実現してくれると知っていました。」

フー氏は、オペラホールの舞台の上にフライングされた8台のL-Acoustics Karaによる5つのメインハングで構成されたL-ISAスピーカーシステムを設計しました。2階と3階の左右インフィルとして、片側8台の伝説のL-Acoustics V-DOSCで展開し、2台のL-ISA Processorユニットがシステム全体の空間化オーディオを管理しました。システムは、中国のL-Acoustics公認プロバイダー・ディストリビューター、Rightway Audio Consultantsによって供給されました。

メインシステムの様子。

ダイナミックでイマーシブなオーディエンス・エクスペリエンスをさらに強化するために、大劇院の技術チームは主役をリアルタイムに追跡できるようBlackTrax赤外線センサーシステムを利用しました。L-ISAコントローラーにシームレスに統合されたBlackTraxは、自動的に役者の動きを追跡し、L-ISA空間ミックスに再現します。フー氏の唯一の仕事は、クリエイティブなイマーシブサウンドのミックスを作ることです。

フー氏は締めくくります。「中央歌劇院のプロダクションでL-ISAを採用することは、『山海情』が初めてです。このテクノロジーによって、音の透明性が高まり、繊細で没入感のあるオーディオ・ミックスを作ることができ、『山海情』の意味深い民話を見事にサポートすることができました。」

BlackTrax赤外線センサーを用いて、主役の動きを追跡しました。

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