劇場で初めてのL-Acoustics Ambiance Acoustic Systemは新劇場に設置されました。場面はヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ『こうもり』より。舞台美術デザイナー:ルカーシュ・クヒンカ(Lukáš Kuchinka)。マルティン・オタヴァが監督。Credit: Nová scena DJKT

2023年5月
チェコの4番目に大きな都市プルゼニ市の地域は、ピルスナー・ウルケル醸造所と自動車メーカーシュコダ・オートの出産地として有名です。2015年に、美術と文化の中心として欧州文化首都に選ばれました。ヨゼフ・カイェターン・ティル劇場はプルゼニ最大の劇場で、地域の重要な文化拠点です。本劇場と新劇場に分かれていて、それぞれオペラ、演劇、ミュージカル、バレエの4つのジャンルに対応するように設計されています。新劇場は、スイスチーズの愛称で親しまれているその象徴的な外壁は、その舞台の大きな幕をイメージに、28の不揃いの穴が開いたセメントで作られています。

最先端技術を駆使したパフォーマンスに理想的な環境を提供する新劇場は、最大460名の観客を収容することができます。ここで上演される演目のニーズに応えるために、劇場経営者は新劇場に柔軟性のある音響システムを求め、最終的にヨーロッパで初めて常設のL-Acoustics Ambiance Acoustic Systemを導入することになりました。チェコのL-AcousticsディストリビュータであるProMusicは、観客の音響体験を向上させるための多用途な音響ツールキットを提供するために選ばれました。

新劇場のチームは、弦楽四重奏のような拡声されないコンサートを含め、多様な演目に最適な音響を提供することが重要であると認識していました。これを達成するために、音の知覚の柔軟性を高め、演奏者と観客の両方にとって理想的な室内音響を実現するソリューションが求められました。ショーとショーの間の転換時間が限られているため、瞬時に変更可能な音響特性は、その選択において極めて重要な要素でした。

そこで、新劇場のテクニカルマネージャーのイゴール・スタシュコヴィッチ(Igor Staškovič)氏と会場のチームはProMusicのダニエル・クルチマージ (Daniel Krčmář)氏と協力し、L-Acoustics Ambiance Acousticシステムを使って劇場の音響を向上しました。

Ambianceでは、L-ISA Controllerのボタンを1つ押すだけで、残響時間を0.95秒から2.0秒まで増加させることができます。これにより、オーケストラ音楽、オペラ、演劇など、それぞれのシーンに適したAmbianceのプリチューニングの設定が可能となり、理想的な空間表現を実現します。このシステムを導入することで、拡声されないコンサートでも、より明瞭で自然なサウンドを実現し、演奏者と観客の双方にとって総合的に体験を高めることができます。

L-Acousticsのアプリケーション・プロジェクト・マネージャーであるジュリアン・ラヴァル(Julien Laval)は、「Ambianceはアクティブアコースティックの最先端を行くもので、プレミアムな音響効果と臨場感あふれるオーディオのユニークな組み合わせを提供します。」と説明します。「Ambiance Acoustic Systemは、適切な音場を作るためにサラウンドシステムとオーバーヘッドシステムの両方を必要とするイマーシブ・デザインを使用し、豊かで没入感のあるオーディオ体験を提供します。スピーカーとマイクのシステムはL-Acoustics 3Dモデリングソフトウェア「Soundvision」を用いてデザインされており、ルームの形状や容積に合わせてシステムが調整されています。

Ambianceは、巧みに配置されたマイクの配列により、会場の既存の音響エネルギーを取り込み、L-ISA Processor IIに搭載されたL-ISA Room Engineを通じて信号を処理します。 L-ISA 3D オーディオリバーブは、クロスファンクション的なアプローチにより、L-ISA Processor II内の強力なDSPリソースを活用します。3種類の反射音を細かく調整することで、アンビエンス・シグネチャーを作成し、会場の音響的アイデンティティを形成することが出来ます。

ルームエンジンから見たL-Acousticsシーンシステム

各Ambianceのプリセット(「シグネチャー」と呼ぶ)は、シンプルなアコースティック拡張から高性能な没入型ハイパーリアル作品まで、会場のパフォーマンス要件に対応するように設計されています。AmbianceとL-ISAは独立して動作することも、組み合わせて無限な音の可能性を生み出すことも可能で、システム設計の自由度を最大限に高めます。6種類のAmbiance Signaturesにより、ユーザーはあらゆるイベントに最適な環境を作ることができます。また、アコースティックのコンサートでは、残留ノイズを可能な限り抑えることができます。

L-ISAシステムは、合計71台のスピーカーで構成されています。劇場のメイン客席エリアでは、L-ISAシーンシステムは、2台のA10i Focusと2台のA10i Wideによる5つのアレイからなり、さらにA10i(WiFo)による2つの拡張アレイがステージを挟むようにフライングされています。フロントフィルとしてステージリップ全体に5XTが配置され、サラウンドとオーバーヘッド用に劇場内に19台のX8が配置されています。サブウーハーはKS21iを使用しています。アンビアンス・アコースティック・システムでは、8本の無指向性マイクが客席上部のFOHに、4本の単一指向性マイクが演奏者の上部に配置されています。LA4XLA2Xiアンプリファイド・コントローラーがシステム全体をドライブします。このシステムにより、完璧なカバレッジと優れた明瞭度、そしてあらゆる演目にも対応できる十分なパワーが得られました。

L-Acousticsシーンシステムの様子

「L-ISA Ambianceのおかげで、観客は劇場で特別なオーディオ体験をすることができるようになりました。」とラヴァルは付け加えます。「この革新的なシステムにより、劇場の音響を特定のジャンルや作品に合わせて正確に変更することが可能です。その結果、観客は演劇、オペラ、ミュージカル、バレエや大規模なフィルハーモニックやシンフォニックのコンサートなど、様々な演目で優れた音響効果を味わえます。」

新劇場の最先端のサウンドシステムは国内外の劇団から高く評価されており、様々なプロダクションに応える会場として注目を集めています。オーケストラの生演奏と卓越した音響がシームレスに融合することで、魅惑的で没入感のある体験ができます。

「新しいシステムは、舞台上のすべてのアーティストがそれぞれの位置から明瞭かつ正確に聞こえるようにし、観客にシームレスなオーディオビジュアル体験を提供します。」とProMusicエンジニア兼公認トレーナーのペトル・シチァーセク(Petr Šťásek)氏は言います。「内蔵のリバーブシステムにより、リスナーはサウンドに包まれて完全な没入感を楽しむことができます。」

客席席のL-Acoustics Ambiance Acousticシステムのサラウンドスピーカーの様子

劇場ディレクターのマルティン・オタヴァ(Martin Otava)氏はシステムの利点を挙げながら、新劇場の観客に特別で比類のないリスニング体験を提供すると指摘します。「このシステムの優れた特徴は、直接的なSRの有無にもかかわらず、アーティストとシームレスに機能する能力にあります。内蔵のリバーブシステムは、舞台とオーディトリウムの両方からの音で観客を包み込み、真の没入体験を生み出します。このシステムの最大の利点は、人工的な音響効果がなくともリスナーが舞台上のアクションに没入できることを可能にする自然なサウンドを生成できることです。

「また、このシステムでは様々な音響効果を簡単に作り出すことができます。例えば、ハムレットの父親の幽霊が客席を歩き回っているような錯覚を、声の色やレベルを変えることなく作り出すことができます。」とオタヴァ氏は付け加えます。

「ProMusicと劇場の両方が、L-ISAイマーシブサウンドとアンビエンス・テクノロジーの可能性を受け入れていることに感激しています。」とラヴァル氏は締めくくります。「この組み合わせにより、新劇場は最先端の音質と比類のない設備を提供し、演劇制作の主要な目的地としての地位を固めることができました。L- Acoustics Ambiance Acoustic Systemが劇場全体の雰囲気をどのように高め、訪れるすべての人に本当に忘れられない体験をもたらすか、楽しみにしています。」

L-Acousticsのオーバーヘッドシステムの様子

ステージリップ用のL-Acoustics 5XT

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