2022年12月
Post Maloneは、4枚目の最新スタジオアルバム『Twelve Carat Toothache』のリリースに合わせて2022年の秋、スペシャルゲストのRoddy Ricchと共に38日間の北米アリーナツアーを敢行しました。PRGが最近、シンガー/ラッパーのツアー用SRプロバイダーとして再び参加しましたが、Twelve Caratツアーで変わらなかったことの1つは、アーティストが最後のメジャーラン、2019年/20年の『Runaway』ツアーでも導入されたL-Acoustics K Seriesスピーカーに頼っていることです。

FOHミックスを担当したのは、Lil Baby、Nas、Big Sean、Miguel、H.E.R.などとのコラボレーションで有名なバートン・イシュマエル(Burton Ishmael)です。FOHをサポートするのはシステムエンジニアのベン・ブランズ(Ben Bruns)で、Twelve CaratツアーとRunawayツアーの間にJack JohnsonとHarry Stylesのツアーに同行しました。

ブランズ氏によると、ステージのユニークなレイアウトに直接応えるために、Post Maloneの最新ツアーでとったサウンドシステムのアプローチは、やや型破りなものであったそうです。「ステージには、私が『トライデント』と呼ぶ3つの平行な張り出しがあり、これによりポスト・マローンが主役となるショーが実現しました。彼はアリーナの全フロアにアクセスすることができ、ファンから絶大な支持を得ました。このジオメトリでは2つの大型ハングをステージ両側に設置するという典型的なアプローチを見直す必要がありましたが、L-Acoustics K2アレイを8つ使用した分散型システムのアプローチのおかげで、Soundvisionの予測をより正確に行うことができ、アリーナ全体でより安定したSPLを実現することができました。」

一般的なL-Rメインセットアップと同じように、左右の張り出しに片側3つのアレイを設置し、さらに端を2つのアレイでカバーしています。PAはそれぞれ同じ構成の16台のK2エンクロージャーによる8アレイで構成されています。8台のKS28がアリーナフロアに設置されて、カーディオイド構成の8台のKS28サブウーハーによる4ハングが補強しています。さらに、6台のKaraによる4ハングを、観客のピットフィルとして水平に設置しました。L-Acousticsスピーカーは合計192台となり、96台のLA12Xアンプリファイド・コントローラーと、2台のP1Milan AVB FOHプロセッサーで駆動されました。

全システムの様子。

システムエンジニアのBen Bruns氏(左)とFOHエンジニアのBurton Ishmael氏。

「親友であるL-Acousticsのデイブ・ブルックス(Dave Brooks)とPosty Touringのプロダクションマネージャーであるデニス・ダネールズ(Dennis Danneels)、PRGのバートン・テネンバイン(Burton Tenenbein)と協力して、Post Maloneのマイクへのかぶりを最小限に抑えるために、ランウェイでのエネルギーを少なくとも15dB減らす非常に効果的なPAをデザインしました。」とイシュマエル氏は語ります。「ローエンドに対応するために彼のマイクを125Hzでハイパスしましたが、それ以上の心配は無用で、Soundvisionが予測した通り、観客エリアのカバレッジは完璧でした。」

イシュマエル氏は、ローエンドは彼のミキシングスタイルにおいて常に重要な要素であることを教えてくれました。「私にとっては、中域と高域のバランスの基礎を作るものです。」と彼は続けます。「Post Maloneの音楽はローエンドに様々な色があり、非常にダイナミックなため、サブウーハーは必要なパンチ力を維持しなければなりません。ありがたいことに、KS28は迫力、応答性、耐久性に優れています。私と私のミキシングスタイルを知っている人なら、私の音量レベルは2つあると分かるでしょう。それは『ソフト』と『フルパワーラウド』です。私がシステムを限界まで使うのは音のディテールだけでなく、フィーリングを重視し、観客を巻き込むようにミキシングするからです。臨場感あふれるサウンドを体験してもらいたいのです。それを達成するには、パワー、ダイナミックなウーハー、そして音楽の歪みをなくすことが必要です。L-Acousticsはそれら全てを叶えてくれるのです。」

システムチューニングの観点から、ブランズ氏はSoundvisionのAutosolverツール、特にAutofilterが「毎晩、音響的に必要な場所に素早く機材をセットする」ために非常に役立ったと語ります。「バートンは非常に耳が良い人なので、たくさんのフィルターを使わずに彼のターゲットカーブに合わせることは非常に重大でした。FIRフィルターを使えば、どの席もベストシートにすることができました。また、Autoclimateの温度と湿度の補正は、ショーをコントロールする上で救いとなりました。寒くてだれもいないアリーナでリグのタイミングとチューニングを行いますが、2万人の観客の叫び声と大量のパイロで、その条件はすぐに変わってしまいます。P1では、このような調整を確実かつ一貫してその場で行うことができ、プロセッサーによって、ADAフィード、レコードなどのルーティングが非常に簡単になりました。P1は、Milan AVBでシステムを駆動し、完璧で一貫したネットワークの信頼性を確保しました。システムは一度もフォールバックを起こしたことがありません。」

ブランズ氏は、秋のツアーにK2を使用することを最終的に決定したのはイシュマエル氏であると指摘し、その選択において最も重要な要因として「観客席全体のカバレッジと一貫性」を挙げています。「さらに、準備から最終公演まで、ツアー全体を通してL-Acoustics社から受けたサポートは素晴らしいものでした。」とブランズ氏は付け加えます。「よく言われるように、最高の音は一つのソースから生まれるというわけです。」

ポスト・マローンの『Twelve Carat Toothache』ツアー制作チーム。