L-ISA Immersive Sound、シンガポール国際芸術祭のシンガポール・チャイニーズ・オーケストラ開幕公演を鮮やかに彩る
Photo Credit: Images Courtesy of Arts House Limited
オブジェクトベースのライブミックスにより、洞窟のような発電所で音楽とボーカルに清らかなサウンドを提供
2022年7月
この夏、シンガポール国際芸術祭(SIFA)が2年ぶりに東南アジアの都市の島に戻ってきました。『The Anatomy of Performance – Ritual』と題されたこのイベントでは、さまざまなパフォーマンスアートの分野で活躍するクリエイティブデザイナーが設計した7つのユニークな場所や会場で、70以上のパフォーマンスが上演されました。廃業した発電所でフェスティバルのオープニングを飾ったSIFAは、J5 Productionsが提供するL-ISA Immersive Hyperreal Soundでシンガポール・チャイニーズ・オーケストラのパフォーマンスで開幕しました。
シンガポール・チャイニーズ・オーケストラは、サラワクを拠点にボルネオ先住民の文化遺産に取り組むクリエイティブエージェンシー、トゥヤン・イニシアティブとともに、『MEPAAN』を演奏しました。ボルネオ島のカヤン族の言葉で「メパーン」は「常に」「たえず」を意味し、このパフォーマンスはカヤン族の精神的・文化的なニュアンスを音と映像で表現したものです。SIFAのフェスティバルディレクターのナタリー・ヘネディゲ(Natalie Hennedige)氏が監督を務め、Tuyang Initiativeの主役Adrian Jo MilangとMathew Ngau Jauが歌と踊りを披露し、オーケストラの演奏を背景に75分間の公演が行われました。
このショーは、鉄とコンクリートで造られた洞窟のような産業空間である、廃止されたPasir Panjang発電所で上演され、衣装デザイナー、写真家、映像作家、舞台・照明・音響デザイナー、マルチメディアアーティストが集まり、観客を東南アジアの手つかずの熱帯雨林にいざなうものでした。SIFAは、Ctrl Fre@kのジェフリー・ユエ(Jeffrey Yue) に音響システムの設計と管理を依頼しました。Ctrl Fre@kは、シンガポール植物園で行われたシンガポール交響楽団の公演や、Esplanade Theatresで行われた坂本龍一氏のコンサート『Fragments』の音響デザインを担当したことがあり、このフェスティバルにはなじみの深い会社です。
「音響システムを設計する際、30mの高い天井と床から天井までの金属製の柱が、この巨大な発電所全体に激しい反響を引き起こすことが分かっていました。」とユエ氏は語ります。経験豊富な音響システム設計者は、高い明瞭度とオーケストラの忠実な拡声をすることが非常に困難であることを理解していました。この空間には音響処理が施されておらず、空調の騒音も聞こえてくるため、さらに難しい課題となっていました。
ユエ氏は、L-Acoustics APACアプリケーションプロジェクトエンジニアのチョン・ワー・キウ(Chung Wah Khiew)が率いるシンガポールのConcept Systems Technologies L-ISA Auditoriumで行われたL-ISAサウンドの実践型ワークショップに参加したことがあるそうです。ユエ氏は、クリアで自然なサウンドを実現するオブジェクトベースミキシングの利点を知っていたので、『MEPAAN』の公演にL-ISAテクノロジーを導入するためのアドバイスをキウに求めたのだそうです。「オブジェクトベースミキシングと定位機能は、この会場の豊かなオーケストラサウンドを向上させると確信していました。」とユエ氏は続けます。
「ユエさんは、『MEPAAN』のプロジェクトの詳細と、会場の音響的な課題を教えてくれました。私たちは、Soundvisionで建築のセットデザインと客席を描き、350人の観客にクリアな音を提供できるL-ISA構成を作成するために連携しました。」とキウは説明します。「空間の性質上、周波数の反応が場所によって違います。オーケストラの広いダイナミックレンジとダイナミックな音楽は、均一なカバレッジを得ることが最優先でした。」とユエ氏は振り返ります。「制作チームと協力し、セットや座席のデザインにこだわりました。L-ISAテクノロジーを使ってオーケストラのエレメントをミックスの中で定位させることができれば、プロダクションの価値をさらに高めることができると確信していました。」
二人はL-AcousticsのAシリーズをベースに、コンクリートと鉄骨がむき出しの場所を避けながら、観客に音を集中させるための正確な水平・垂直方向のカバレッジを実現するデザインにたどり着きました。
A15i FocusとA15i Wide各1台の 5つのアレイを6mの高さに配置し、客席のみを正確にカバーするようにしました。2台のSB28サブウーハーは、カーディオイド構成で配置され、ステージ上の低周波の干渉を最小限に抑えました。また、合計56本のマイクロホンがオーケストラの様々な楽器を拾うために使用されました。ステージ・モニターにはL-AcousticsのコアキシャルX12とX8エンクロージャーが使用され、システム全体をLA8とLA4Xアンプリファイド・コントローラーがドライブしました。
計算の結果が功を奏し、着席した観客の94.7%がイマーシブカバレッジのL-ISAゾーンに収まりました。
パフォーマンスは、DigiCo SD5にネイティブに統合されたL-ISAコントローラーとL-ISAプロセッサーでミキシングされ、L-Acousticsアンプリファイド・コントローラーを経由してメイン・シーンシステムに出力されました。
PPPSのSIFAプロダクションマネージャーであるシンディー・ヨン(Cindy Yeong)氏は、フェスティバルの開幕公演の成功を受けて、『MEPAAN』がこれまで携わったPasir Panjang 発電所で行ったショーの中で最も優れたサウンドのショーの一つだと感じています。
「AシリーズとL-ISAの技術がなったら、このような結果は得られなかったと思います。」とヨン氏は言います。「作曲家とシンガポール・チャイニーズ・オーケストラの経営陣は、L-ISAのオブジェクトベースの定位機能が、個々のオーケストラの楽器の位置を明確にし、高い明瞭度を実現するのに役立ったとコメントしています。」