2024年4月
1895年創立のセントマイケル・グラマースクールは、オーストラリア第2の都市メルボルン郊外のセントキルダにある共学の私立学校です。同校の現代的なカリキュラムは、オーストラリアの初等教育から高等教育まで対応しています。同校の特徴である根拠に基づいた体験学習プログラムでは、スポーツや舞台芸術への積極的な参加を通じて、教室外での発達や発見を促し、教育への総合的なアプローチを重視しています。

セントマイケル学園のパフォーミング・アーツ部門は、生徒の自主的な参加が非常に多く、年間を通して多くのプロダクション、コンサート、パフォーマンスを上演しています。作品にはコンテンポラリーダンス、音楽、合唱アンサンブルなどがあります。高学年と中学年のミュージカルは高い評価を得ており、ビクトリア州におけるアマチュアの音楽劇を継続的に支援、奨励、発展させるための非営利団体のビクトリアン・ミュージカル・シアター・ギルド(Victorian Musical Theatre Guild)から最優秀作品賞を4回受賞しています。また、高学年の生徒が熱心に参加するハウス・ドラマ・フェスティバルも開催しています。同校では、音楽、演劇、ダンスに参加するだけでなく、照明や音響のオペレーション、セットの構築とデザイン、衣装と化粧、舞台監督など、プロダクションに携わることも奨励しています。


1990年以来、セントマイケル学園は歴史的建造物に登録されている旧セントジョージ教会をリハーサルや学校の集まりに使用してきましたが、学校が制作するミュージカル、ダンス、演劇を含む多彩なプログラムに対応するために会場の機能性を向上する必要がありました。2023年5月にパフォーミング・アーツ・センターとしてリニューアル・オープンしたこの建物は、現在、年間を通して作品を上演する主要な会場となっています。1877年に建てられたオリジナルの内装は、アーチ型の木造天井、文化遺産に登録されているロンドンのLewis and Sons社製のオルガン、19世紀末の美しいステンドグラスが特徴です。

この建物の内部は、オリジナルの内装要素を残しながら、激しいダンスの動きにも安全に対応できるスプリングフロア、特注の聖歌隊席、様々な舞台構成を可能にする電子制御の暗幕やドレープなど、最先端の設備を備えた劇場を作るために、細心の注意を払って改装されました。教会の身廊にあるメインの固定傾斜座席は、およそ200人の観客を収容できる一方、フロアでは200席の椅子を置くことができ、トランセプト(十字架を描く交差廊)にはフレキシブルな座席配置が可能になっています。


地域の主要な劇場空間を調べた結果、セントマイケル学園の経営陣は、モナシュ大学のクレイトン・キャンパスにあるアレキサンダー劇場を参考にし、アレキサンダー劇場のサウンドシステムを設計した地元の大手劇場設計コンサルタントStudio Entertechが、新しい劇場に将来性のあるテクノロジーの導入を依頼されました。

セントジョージ教会は1877年に建てられ、増幅器を使わない合唱演奏のために設計されました。Studio Entertechのディレクター兼シアター・コンサルタントのケイト・ケリー(Kate Kelly)氏はこう語ります。「教会の明るい雰囲気を、現代的な音楽や演劇を幅広く上演できるスペースに変える必要がありました。」また、近くに路面電車が走っており、日常的な学校行事もあったため、騒音管理にも課題がありました。


Studio Entertechは、L-AcousticsによるL-ISAイマーシブ・テクノロジーを用いて3Dの空間オーディオミキシングを作成しました。「残響の多いスペースになっているので、サウンドシステムの指向性制御が優れていなければなりませんでした。L-ISAテクノロジーでは、精密度の高い制御を実現するイマーシブ型オーディオ・テクノロジーで空間を際立たせることができます。また、プロデューサーや技術者を担う学生たちにとっても、将来を見据えた素晴らしい学習体験となるでしょう。」とケリー氏は加えました。

Studio Entertechは、L-Acousticsアプリケーション・エンジニアであるダミエン・ユハス(Damien Juhasz)と連携し、 A10i FocusA10i Wideをそれぞれ2台ずつによる5ハングからなるメインのシーン・システムと、センター・ハングの後ろにフライングされた2台のKS21サブウーハーで構成されたL-ISAソリューションを展開しました。8台のX8コアキシャルスピーカーが前列席に空間オーディオを提供します。10台のL-Acoustics X8スピーカーによるサラウンドシステムは固定座席エリアをカバーしています。トランセプトでは、片側2台のA10i Wideによるサイドフィルがフライングされています。モニタリングは、4台のX12スピーカーで行います。


Studio Entertechは、劇場の技術チームに、L-ISAコントローラーをMADI経由でミキサー・コンソールに接続した独立したPCモニターを提供し、ミキサー・コンソールからの切り替えをシームレスに行えるようにしました。2人の学生がコンソール上のL-ISAコントローラーで、1人が予備のディスプレイ上でいつでも音響操作が可能な状況になっています基本的な左右出力モードも用意されており、よりシンプルなセットアップのイベントにも対応します。

セントマイケル学園の学生は、オーストラリアではシドニー・コロシアムしか導入されていない最先端のイマーシブ・オーディオ・テクノロジーに慣れ親しんで卒業することになり、プロとしてのキャリアをスタートしやすくなることでしょう。「次世代のテクノロジーに投資するというセントマイケル学園の取り組みのおかげで、学生たちは、最終的にはエンターテインメント業界の将来への投資につながる、オーストラリアではまだ比較的珍しい機器を実際に体験することができるようになりました。」と、Studio Entertechのケリー氏は締めくくります。

プリントアウト版はこちらから