演劇、コンサート、ラジオ・テレビ放送、企業・文化イベント、そして最近ではNPRの人気ニュースクイズ番組『Wait, Wait… Don’t Tell Me!』にも使用され、新しく生まれ変わったこの会場は、あらゆるニーズに対応できる音響を備えています。

2022年9月
シカゴのファイン・アーツ・ビルは、シカゴの有名なループ地区にあるロマネスク様式の貴重な建物で、この建物の中にはさらに素晴らしい宝物、600席のスチュードベーカー劇場があります。ファイン・アーツ・ビルは、1885年にスチュードベーカー社の馬車組立工場として建設され、1898年に現在の形と名前になり、その時にスチュードベーカー劇場も生まれました。1917年の改修後、ツアープロダクション、映画館、テレビスタジオなど、前世紀に渡り様々な変遷を遂げてきましたが、そのほとんどがグラウンドスタック式の汎用PAシステムに依存していました。長い年月を経て、ようやく今年、数百万ドルをかけて改修が行われ、コンサルタントThreshold AcousticsとインテグレーターOSA Integrated Solutionsが共同で設計したL-Acoustics Kara IIによる新しいスピーカーシステムが導入されました。

「Threshold Acousticsは、PAシステムを含む新しいAVシステムを必要とする会場の新しいオーナーから連絡を受けました。」と、この春、新しいスピーカーに加え、プロジェクトの一部としてDiGiCo Quantum225FOHコンソールとD2-Rackを設置したOSAのAVインテグレーション・ディレクターであるブランドン・ガードナー(Brandon Gardner)氏は語ります。「劇場の工事範囲と期間を考慮し、OSAとThresholdは、劇場が必要とする音響をできるだけ効率的かつ効果的に実現するための設計・施工アプローチで協力することにしました。」

その努力は、Schuler Shook社が設計したリギング、電源、ケーブル配線などの全く新しいインフラにまで及び、その一部は、この劇場が得意とする様々なイベントやパフォーマンスの音響を提供するよう求められる新しいPAシステムを支えています。1900年代初頭はボードビルとオペラでしたが、現在はミュージカル、オーケストラコンサート、ダンスパフォーマンス、企業イベント、そしてNPR(米国公共ラジオ放送)の長く人気のあるニュースクイズ番組『Wait, Wait… Don’t Tell Me!』もこのプログラムに含まれるようになりました。1つのPAでこれら全てに対応する必要があり、L-AcousticsのKara IIが最適と判断されました。

600席のスチュードベーカー劇場

スチュードベーカー劇場のような古い会場では、独特な問題が発生することがあります。この場合、カバレッジが鍵となり、これまでのサウンドシステムでは適切にカバーされなかった客席の奥やバルコニー席まで均等に音を届けることが重要でした。と、ガードナー氏は語ります。「そして、デシベルの高いコンサートから、企業イベントや『Wait, Wait…』のようなニュアンスのあるプロダクションまで対応できるPAであることです。」と説明します。「Kara IIは、そのすべてをこなしながら、目立たない存在になり、この劇場の美しさを輝かせることができるのです。」

シカゴに本社を置くThreshold Acousticsのシニアコンサルタント、マーサー・M・エイプリン(Mercer M. Aplin)氏は、ジオメトリの複雑な空間は、この夏、新しくなったスチュードベーカー劇場のオープニングに予定されていた、高度な作品『Skates』と同様に実にチャレンジングだったと語ります。この新作ミュージカルは、アメリカンアイドル出身のダイアナ・デガーモとエース・ヤングが主演する「グリースとヘアスプレーにザナドゥを足したような作品」と評されています。

「音響の改修は複雑で時間も限られており、AV業界の他の企業が経験しているようなサプライチェーンの問題にも翻弄されていました。」とエイプラン氏は語ります。「そこで、エンジニアリングと何キロもの新しい電線管の設置をコーディネートしてくれる業者と提携することにしたのです。OSAと組んだのは、彼らが複雑な改修工事の経験があり、レンタル会社として、我々が新しい機材の到着を待っている間、システムのギャップをレンタル機材で一時的に埋めることができたからです。」

ThresholdはL-C-R設計を採用し、センターのクラスターをボーカル用に調整し、左右のクラスターを音楽のメインアレイとして、会場の劇場的な要件の全てに対応するようにしました。L-AcousticsのSoundvisionソフトウェアを使って、Thresholdは5XTとX8を組み合わせて主な課題となっていた2つのバルコニーの隅々までカバーするようにスピーカーを配置することができました。

「アンダーバルコニーのメインハウスミックス位置まで低域を届けるために、5XTX8の2本のラインを使用しました。同じく、バルコニー席と2つ目のミックスポジションをカバーするためにX8を一列配置しました。」とエイプリン氏は説明します。「スチュードベーカー劇場は、私たちにいくつかの難題を突き付けましたが、L-Acousticsは実りある解決策を提示してくれました。」

メインシステムは、Kara II、Kiva II、KS21で構成されています。

X8と5XTがアンダーバルコニーフィルを提供します。

新しいシステムは、片側8台のKara IIスピーカーと8台のKiva IIスピーカーで構成されるセンターハングと、ローエンドを提供する4台のKS21サブウーハーをフライングしています。5台の5XTスピーカーがフロントフィルとしてステージリップに並び、さらに5台がアンダーバルコニーをカバーするために使用されています。20台のX8スピーカーは、サイドフィル、アンダーバルコニーのディープフィル、上部のサイドフィル、VIP席をカバーするために使用されています。全システムは4台のLA2Xiと8台のLA4Xアンプリファイド・コントローラーにてドライブされています。

Xシリーズはフロントフィルとアンダーバルコニーフィルとして使用されています。

そして、これらのすべての機材が、会場の音響に対応するために特定の目的をもっています。「このような古い劇場は、増幅器が使われる前に作られ、特に隅々まで人の声を届けるように設計されています。」と、スチュードベーカー劇場のテクニカルディレクター、ケビン・スコット(Kevin Scott)氏は説明します。「増幅された音を空間に押し込めば、残響と反射の混乱が生じます。L-Acousticsのスピーカーは、部屋の隅々まで、特にバルコニーの下まで、音を正確に届けることができるよう慎重に選ばれました。その結果は素晴らしいもので、システムを以前の半分の音量に設定しても、その倍の明瞭度とカバレッジを得ることができました。」

スコット氏は、Threshold Acoustics社がピンクノイズを用いて反射特性をマッピングし、劇場の課題を入念に調査したことを指摘します。「この高品質の新しいKara II PAは、カーテンなどの音響処理と相まって、スチュードベーカー劇場のサウンドをより際立たせています。さらに、このシステムは非常に汎用性が高く、ダイナミックで、大音量の音楽から、スポークンワードまで、その間にあるすべてのものにうまく対応する多目的システムです。」


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