ブルーノ・マーズのバンド、ザ・フーリガンズ @ The Pinky Ring (Ⓒ Daniel Ramos)

2024年8月
ショーマンシップとエネルギーに関しては、ブルーノ・マーズの右に出る音楽アーティストはほとんどいないでしょう。ブルーノ・マーズは、あっという間に巨大なスタジアムを満員のファンで立ち上がらせ、ショーの間ずっと踊り続ける男です。彼は、K2スピーカーによるコンサート用サウンドシステムを使用するPark MGMの Dolby Liveで、9年間ダイナミックな公演を行い、ラスベガスのレジデンシーのトップアーティストであることも証明しましたが、この世界的スーパースターは、ベラージオ・ホテル&カジノ(Bellagio Hotel & Casino)内の親密な新しい会場であるThe Pinky Ring(以下「ピンキーリング」と言う)に、彼の特徴的なサウンドとシックでレトロなスタイルをもたらしました。今回は、L-AcousticsのAシリーズによるサウンドシステムが導入されました。

ピンキーリングのあらゆる要素、つまりしゃれたレトロなインテリアデザインから、想像力豊かなカクテルの創作、新進気鋭の有名アーティストによる刺激的なライブパフォーマンスまで、すべてはマーズが自らキュレーションしたもので、マーズは2月に長年のグループであるザ・フーリガンズとの2週間のレジデンシーでこの会場をオープンしました。

「音楽は、間違いなくピンキーリングでの体験において極めて重要です。」と、フーリガンズのミキシングを担当したフリーランスのエンジニア、ブランドン・アンドレアセン(Brandon Andreasen)氏は言います。「ブルーノがステージに上がると、ときどき観客の叫び声が100 dBAを超えることがあります。そのため、パフォーマンスの忠実さとニュアンスを維持しながら、それに匹敵できるスピーカーシステムが必要でした。このような小さな L-Acoustics A15i アレイが生み出すことのできるパワーの大きさにとても感動しています。ピンキーリングにある個別の2 ボックスアレイからアリーナサイズのサウンドが得られるような気がします。」

Ⓒ John Esparza


PSX によって構築されたコンサートサウンドシステムは、音響会社Designtechnikによってデザインされ、元ブルーノ・マーズのSEで現在はL-Acousticsのアプリケーションエンジニアであるクリス・サリバン(Chris ‘Sully’ Sullivan)がデザインをサポートしました。L-Acousticsの音響モデリング・ソフトウェアSoundvisionを使用し、A15i FocusA15i Wideのメインアレイをステージ両サイドの上部にフライングするシステムを構築しました。ローエンドには、デッキの下のコンクリートに 4台のSyva Subエンクロージャーが水平に並べられ、両側に1台ずつエンドスタックされたKS28サブウーハーの上にフロントフィル用のコアキシャルX12が配置されています。モニタリングのためにステージの前に2台のX15 HiQウェッジが置かれています。

ピンキーリングの「リビングルーム」の後方とダンスフロアエリアには、天井に取り付けられた3台のX8ディレイスピーカーと2台のSB10iサブウーハーが設置され、さらにX8とSB10iが2つのメインなVIPエリア全体に配置されています。豪華で人気の高い後部座席のバンケットには、合計6台のX4iと3台のSB10iが設置され、最も高額の座席に座った観客が最高に親密なショーを体験できるようになっています。6台の超小型X4iスピーカーと4台のSB6iサブウーハーは、グラミー賞の賞状が並ぶメインエントランスの廊下に沿って頭上にフライングされています。Syva SubとKS28のパワーはLA12Xアンプリファイド・コントローラーで供給され、残りのセットアップはLA7.16iで駆動されます。システムの前段にあるL-Acoustics P1がMilan-AVBへの変換を処理します。

サリバンは、マーズの要望により、視覚的な一体感を高めるために、システムを意図的に会場の前方にオーバーディレイさせていると指摘します。「すべてがオーバーディレイされていますが、イメージがステージから直接来ているように聞こえるように埋められています。」と彼は説明します。「たとえば、バンケットの下のスピーカーはほぼ10 dB下げられています。これらは主に、インパクトを与えるためではなく、イメージを引き出すために使用されています。これは微妙な効果であり、それらが何かを行っていることに気づく唯一の方法は、後ろにあるすべての音を消すことです。その時点では、非常に平坦で空虚な音がします。しかし、それらをオンにすると、音が突然ステージから直接来ているかのように、心地よく丸みを帯びます。」

Ⓒ Daniel Ramos


マーズ自身を含め、メジャーな有名人やミュージシャンの姿がピンキーリングで頻繁に目撃されており、会場のシステムは皆を笑顔にしています。「ここでのオペレーションレベルはAレベルのアリーナ・ポップスター並みです。これがまさにブルーノが期待していた『熱気』です。システムをオンにして初めてサウンドチェックをしたとき、ブルーノは大喜びでした。」

その満足感は、ミキシング・コンソールにいるエンジニアにも伝わっています。「Aシリーズでミキシングをするのは今回が初めてですが、とても楽しいです。」と、アンドレアセン氏は熱く語ります。「とても楽しいのは、ブルーノが作り上げるライブ・エンターテイメントのおかげです。ステージから流れる音源は非常に優れており、このシステムは彼らのパフォーマンスを完璧に引き立てます。」

親密な雰囲気にもかかわらず、ピンキーリングは大きなエネルギーを生み出すことができます。「他の会場では、妥協せざるを得なかったり、思い通りのサウンドが得られなかったりすることもあります。しかし、このシステムのおかげで、現在すべてのライブミュージックをミックスしているロス・ブラック(Ross Black)は、毎回完璧なミックスを提供できます。」

Ⓒ Daniel Ramos


こうして、エンターテイメント施設が多いこの街で、ピンキーリングを際立たせるユニークなオーディオ体験が生まれました。アンドレアセン氏は、締めくくります。「ラスベガスには素晴らしい会場がたくさんありますが、ピンキーリングでの体験は他に類を見ません。L-Acoustics がこれほど多くのトップ会場やツアーで使用されているのには理由があります。L-Acoustics は素晴らしい製品を作り、それを素晴らしい人々がサポートしているからです。ピンキーリングはその完璧な例です。」