L-Acoustics A15iがWilliams-Briceスタジアムのコンクリートを制圧する
2022年11月
サウスカロライナ大学のウィリアムズ・ブライス・スタジアム(サウスカロライナ州コロンビア市)に対して、「グッド&ラウド」という形容詞がとても似合っています。サウスカロライナ・ゲームコックスのホームであるこの会場で行われる試合の雰囲気は、NCAAフットボールの中でも最も騒がしくエネルギッシュな環境として評判になっています。この熱意は最も騒々しい環境として有名なこのスタジアムで、プレイ指示をチームに叫ぶ対戦相手のクォーターバックにとってトラブルの元になることがあります。
そこで、このスタジアムに2022年大学フットボールシーズンが始まる前に音響システムの改修が必要となり、大音量と高音質の両方を兼ね備えたブランドL-Acousticsが選ばれました。A15iシステムは、Salas O’Brien社のコンサルタントIdibriのシステム設計をもとに、セントルイスに本拠を置く、Logic Systems社傘下のCignal Systems社が2022年の夏に設置したものです。
1934年に建てられたウィリアムズ・ブライス・スタジアムは常に進化に取り組んでいる会場です。この10年間で3,000万ドルもの改修と増築を繰り返し、オープン当初は17,600人だった収容人数は、現在では8万人弱に達しています。当然のことながら、学校側はスタジアムの音響もそれに負けないようにしたいと考え、今回のA15iシステム導入につながりました。この会場は、大学フットボール競技場としては珍しく大きなバルコニーを持ち、変化し続けるレイアウトとジオメトリをしていることから、スタジアムの一端に設置される典型的なポイントソースシステムの代わりに、分散型のサウンドシステムデザインが候補となりました。
実はこのスタジアムは、A15iスピーカーを分散型デザインで導入した史上初のアメリカンフットボールのスタジアムなのです。PAとしてボウル席全体に数百台のスピーカーが設置されたとCignal Systemsのオーナー兼CEOであるチップ・セルフ(Chip Self)氏は説明します。
「システムはスタジアム全体で14種類の異なるアレイがあり、それぞれ1台のボックスから6~7台のボックスで構成されています。」と語ります。システムは67台のA15i Focus 、139台のA15i Wide、75 台のX12と37台の X8を含む318台のスピーカーを採用し、53台のLA4Xと29台のLA2Xiアンプリファイド・コントローラーによってドライブされます。Idibriのケイシー・シェレッド(Casey Sherred)とベン・ケイティング(Ben Cating)が設計したこのシステムは「複雑なシステムですが、驚くほど素晴らしいサウンドで、会場のすべての座席を均一かつ一貫してカバーします。」
Idibriの音響・技術担当シニアコンサルタントであるシェレッド氏は、並外れたカバレッジがこのプロジェクトの重要な目標であったことを認めます。実際、大学側は古いエンドゾーン・システムをより良いニュアンスのカバレッジに置き換えたいと考え、分散型システムのアプローチを要求しました。「分散型システムは、彼らが望むカバレッジを提供するとともに、学生席では音を大きくする、スイートルームでは小さくするなど、会場のさまざまな場所に合わせてシステムを調整し、ファンの体験を高めることが可能になります。」とシェレッド氏は説明します。「Aシリーズでは、これらの要件とそれ以上のものを満たすことができました。」
A15iは低域を40Hzまで拡張するため、設計上サブウーハーが不要になったことを指摘します。「さらに低域を最適化するために、フルレンジのAutoFilterを適用します。」と続けます。「これは、Network ManagerとSoundvisionモデルのシームレスな統合によって可能になりました。フィルタの設定は自動的にアンプリファイド・コントローラーにインポートされるので、大きな労力と時間の節約につながりました。完全なエコシステムのアプローチにより、設計も展開も簡単かつ迅速になりました。」
しかし、スピーカーの取り付けが、このプロジェクトで最大の難関となったのです。ボウル下部をカバーするメインアレイスピーカーの多くは、コンクリート打ちっぱなしの大きく張り出したバルコニーの下側に取り付ける必要がありました。このような構造では、どうしてもコンクリート内にエアポケットなどの異常が発生し、素材の質感にバラつきが生じます。このスピーカーの設置位置は、視線の問題だけでなく、音のねらい場所やカバレッジの問題にも対処しなければなりませんでした。
これには、スピーカーの設置方法を根本から見直す必要がありました。Cignal Systemsのインテグレーターは、まずスピーカーをつなぐアルミ削り出しプレートを連結しました。次に、1カ所でもコンクリートにストレスがかからないようにアンカーとアンカーの間で十分な間隔をとって、アンカーを慎重にコンクリートに配置してからメインマウントを取り付けました。セルフ氏によると、A15iはこの高精度で完全なカスタムインストレーション設計に対応できる唯一のスピーカーだったそうです。
「A15iのパワーと軽量、そしてボックスタイプごとに用意された様々なパターンとウェーブガイドの組み合わせが、このプロジェクトが要求する柔軟性を実現しました。」とセルフ氏は語ります。「A15iで通常より45センチほど高い位置にボックスを取り付けることができたので、視界を妨げないという条件を満たすことができました。また、A15の設備向けバージョンであれば、高価なリギングを追加購入する必要もありませんでした。A15iがなければ、このプロジェクトを成功させることはできなかったでしょう。」